
著者:高木徹
講談社刊
すでに各所で話題になっている『「バレンタイン流マネジメント」の逆襲』を読みました。
著者はNHKのディレクターで『クローズアップ現代』のバレンタイン特集を2度にわたって手がけた高木徹氏。優れたノンフィクションライターでもあり、マリーンズのファンでもある高木氏が膨大な取材データと関係者へのインタビューを元にバレンタイン監督のマネジメント手法、バレンタイン監督自身の二面性、昨年の躍進、そして今季の低迷の原因について深く掘り下げています。
いつだったか里崎がバレンタイン監督を評して、
「顔は笑っているが、目が笑っていない」
と言っていましたが、里崎の言葉の深層がこの本を読んでよく分かりました。
もともとこの本は今年3月に出版される予定だったのですが、諸般の事情により9月末にずれ込んでしまいました。出版の時点ではすでにマリーンズの4位が確定しており、バレンタイン本としては旬を逃した感もありますが、逆に半年遅れたことにより今シーズン低迷の原因、そしてバレンタイン監督の手法が持つ落とし穴について言及する時間的余裕が生まれました。このことが他のバレンタイン本には無い凄みを同書に与えていると言えます。
『「バレンタイン流マネジメント」の逆襲』は、ただのバレンタイン監督礼賛本でもなければ、野球を知らない人が書いたビジネス本でもありません。読み終わった後に背筋が震えるようなすばらしい本です。思わずNHKの受信料を払いたくなるような大作です。マリーンズファン必読の書と言えるでしょう。特にこの数年でマリーンズのファンになった方に読んでいただきたい本です。そしてこの本を読み終えた後に、「自分は何故マリーンズが好きになったのか」、「マリーンズのどこが好きなのか」、「来年以降もマリーンズを応援できるか」と自問していただきたいと思います。
それでは、後半は『「バレンタイン流マネジメント」の逆襲』のネタバレもしつつ、今シーズン低迷の原因を考えていきましょう。
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日替わり打線、極端な守備体系、ボビーチルドレンの活躍、故障者を出さない選手の体調管理。昨年はバレンタイン監督のやることなすことすべてうまくいきました。その背景には膨大なデータ分析、バレンタイン監督の選手に対する卓越した観察眼がありました。すべての情報をバレンタイン監督に集中させ、チームの編成や補強、さらにはファンサービスにいたるまですべてバレンタイン監督主導の元に行われました。このバレンタイン監督による独裁体制は昨季は非常にうまく機能したため、結果としてマリーンズは日本一、さらにはアジア一を達成することが出来たのです。
しかし今年、「どこからでも点が取れた日替わり打線」が「どこから始まっても点が取れない日替わり打線」に変わり、俊介や久保は低迷。若手選手は今ひとつの成績に終わり、極端な守備体系は相手に裏を突かれ、怪我人も続出。マリーンズは昨年の躍進が嘘のようにBクラスに沈みました。マリーンズ低迷の理由はいったいどこにあるのでしょうか。
■ 初芝GODの不在。
やはり今年の低迷は初芝様の不在を抜きに語ることは出来ないでしょう。
昨年初芝様はどんなに調子を落としても2軍に落ちることがありませんでした。つまりこれはバレンタイン監督が初芝様の価値を打棒以外に見出していたということです。初芝様の役目は常にベンチの盛り上げ役となりチームのムードを高めること。そしてここ一番の代打。初芝様がベンチでナインを見守ったからこそ若い選手たちが結果を恐れずプレーすることが出来たわけです。
そしておそらく、不平不満を口にせず、ベンチでチームを盛り上げつつベンチの裏で黙々と素振りを繰り返す初芝様を見て、バレンタイン監督の采配に不満を感じていた選手たちは、「初芝様があれだけチームのために頑張っているのだから、自分も不満を言うのはやめよう」と思い直したはずです。つまり初芝様の存在そのものが選手の采配に対する不満を解消する役目を果たしていた訳です。今年は昨年に比べチーム内の不協和音が何回も漏れ聞こえました。それは勝てなくなったこと以上に、初芝様がいなくなり、不満を抑えられるベテランがいなくなったということも大きく影響しているのではないかと思います。
■ WBCの影響
選手たちは否定しますが、残念ながらWBCの影響はありました。これは選手個人個人の調整の遅れ、というよりも、チーム作りの段階で8人もの選手が抜けてしまったことによる悪影響が大きかったと思います。本書にあるように、キャッチャーとサードとショートがいなければ守備の連携も取れませんし、バッテリーの呼吸も合いません。WBCに参加した選手と参加していない選手のモチベーションの差がチームの雰囲気に悪影響を与えてしまった面ももちろんあるでしょう。
■ 研究されたバレンタイン野球
勝ち続けるチームは当然研究されます。次々と繰り出される相手の対抗策を跳ね返し続けてこそ真に強いチームとなれるのですが、今年のマリーンズはどうだったでしょうか。相手に研究された結果、投手陣が崩されたり、こちらの裏をかかれることが目立ったのではないかと思います。
今年のマリーンズを見ていて、「ああ研究されているな」と感じたのはマリーンズの守備体系の裏をつかれる場面が増えたことです。去年は膨大なデータを元にして選手の守備位置を大胆に動かし、結果ゲッツーを量産してチームのピンチを救うことが出来ました。しかし今年は守備体系の逆を突かれて内野手の間を抜かれたり、あと一歩で追いつけずヒットにしてしまった、という場面が増えました。普通のチームなら内野を抜かれてもすぐには致命傷になりません。ですがここで問題です。ロッテの外野手は誰でしょうか。
1 フランコ
2 パスクチ
3 ワトソン
こういう面子が揃っているんですよ。そりゃ大惨事になります。とくに守備体系と言うのはあらかじめ打球の方向を想定して変更しますから、想定した方向と逆の方向に打球が来たらどうしても対応が遅れます。その上外野守備が壊滅しているんですから失点の可能性が飛躍的に上がってしまうのです。せめてサブローや大塚が毎試合外野を守れたら・・・。バレンタイン監督は外野守備を重視していないようですが、サブロー、大塚の不調はマリーンズ低迷の理由の一つに数えて良いと思います。
■ 機能不全に陥った日替わり打線。
もともと日替わり打線はスタメンを外された選手の不満を高めるという弱点があり、昨季は勝ち続けることによって不満が解消されてきたという面もあります。だから勝てなくなれば選手の不満は増大します。しかし、今年に限って言えば不満以前にそもそもスタメンで使える選手が9人揃わなかったという面もあります。サブロー、堀、橋本、大塚、フランコ・・・、不調の選手が多すぎますね。端的な例で言えば里崎と橋本。去年はツープラトン体制と言われ、里崎と橋本は交互に起用されました。そうすることによってリードにも幅が生まれ、マリーンズ投手陣の躍進を生んだのです。しかし今年は橋本の打撃不振もありキャッチャーはほぼ里崎で固定。橋本の打率が一割台前半ではやむを得ません。結果として里崎は規定打席に到達しホームラン17本と大きく成長しましたが、投手の成績降下にも微妙な影響を与えた面は否定できないでしょう。
それともうひとつ。バレンタイン監督は打順という概念をあまり重視しません。選手に求められるのは打順ごとに決められた役割を果たすことではなく、状況に応じてバレンタインに求められた仕事を果たすこと。つまりランナーのいない場面ではチャンスメークを、ランナーがいる場面ではランナーを進める役割を、チャンスではランナーを還す役割を求められるわけです。だからバレンタイン監督の野球ではホームランを量産できる長距離砲よりも、今江のような中距離打者が重宝されるのです。日替わり打線は選手が好調であればどこからでも点が取れる反面、不調の選手が多いと一気に迫力に欠ける、得点力の無い打線になってしまいます。バレンタイン監督もこのようなデメリットは把握しているでしょうから、打線の中に「不確定要素」を入れているのでしょう。例を挙げるなら去年のスンヨプであり、今年のパスクチです。スンヨプは30発のホームランを放ちチームの勝利に貢献しましたが、正直パスクチはあまり・・・、ですね。
■ 三者残塁無得点は拙攻じゃない、と言うけれど・・・
バレンタインのユニークな理論の一つに、「拙攻はマイナスではない」、と言うものがあります。「後一歩で点が取れなかった」のではなく、「点を取る一歩手前まで行った」とプラスの評価をするのです。しかし、周りの選手たちの考えは違うでしょう。相手も含めて。
「ピンチの後にチャンスあり」という言葉があります。ピンチをしのいだことにより精神的に楽になったチームが勢いづいて逆にチャンスをつくるシーンはよくあります。またチャンスを次々と潰していくと、「今日は点が取れないんじゃないか」と不安になったり、焦りから硬さが出てしまうこともあります。今年のマリーンズはチャンスを潰しまくりました。チャンスで何がしたいのかわからない選手が多すぎです。バレンタイン監督が言うベストのパフォーマンスと言うのは決して大振りすることじゃないんですが、選手達はそれが分かっていないか、分かっていても実行できないような状態に陥ったのではないかと思います。
■ バレンタインの期待に応えられなかった選手たち
『「バレンタイン流マネジメント」の逆襲』を読めばバレンタイン監督の選手に対する考え方が分かります。黒鴎さんの言葉を借りれば、「選手を駒として使い続けた」のです。しかし今年はその「駒」としての選手たちの成績が急降下、若手も台頭したとは言え満足な成績を残せていません。大松、青野はマシとしても、塀内、根元、正人、竹原、神田あたりは落第でしょう。バレンタインが判断した選手ごと能力値の範囲内で、ベストのパフォーマンスを発揮すること、これができた選手は、果たして何人いたでしょうか。
■ 打たなければ、勝たなければ。プレッシャーに押しつぶされた選手たち。
チームとしての目標も守るべきものも無く、帳尻と胴上げ阻止ぐらいしかやることの無かったチームに突如降りかかった「前年優勝チーム」の重圧。それがどれほどのものだったかは想像するに余りあります。7月以降の勝負どころで連鎖反応を起こしたかのように負け続けたマリーンズは、勝たなければという重圧にやられ、もがけばもがくほどドツボにはまっていったのでしょう。バレンタイン監督によるモチベーション管理もうまくいかなかったようです。本書を読めば分かるように、今年のバレンタイン監督はモチベーションの管理においても決定的な失敗を犯しています。
■ バレンタイン監督は外人偏重?
なぜバーンに二度目のチャンスを与えたのか、なぜフランコやパスクチを使い続けたか。これはよく分かりませんね。
■ バレンタインのワンマン体制は磐石なのか
本書を読むとチームに関するすべての情報が全権監督であるバレンタインに集まってくることが分かります。本書の言葉を借りればバレンタイン監督のワンマン体制、言い方を変えれば独裁体制です。去年はうまく行ったのでしょうが、ことしは疑問です。バレンタイン監督が一貫性のない采配を振るったときに意見できるコーチがいるのでしょうか。情報の収集と選手のコーチに終われるコーチ陣には無理なのではないでしょうか。「権力は腐敗する」という言葉があります。ワンマン体制は永続するものではありません。イエスマンばかり集めていてはやがて機能不全を起こします。バレンタイン独裁体制にはすでにあちこちでほころびが見られるのです。それをどこまで修正できるのか、それが来年の大きな鍵となるでしょう。先日のファンフェスではバレンタイン監督が球団の企画に背を向けてファンにサインをし続けました。すべての情報が集まってくるはずの監督が何故「私は企画の時点からタッチしていない」と怒るのか。球団の内部で何が起きているのか。来年がちょっと不安です。
色々書きましたが、とにかく『「バレンタイン流マネジメント」の逆襲』を一度読んで欲しいです。特に後半の今シーズンについての部分はこの本の肝ですよ。
すでに読まれた方の感想をピックアップしてみました。ご参考までに、こちらもどうぞ。
眠れないので思いの丈を書いてみる企画 関東黒鴎組通信 Returns
バレンタイン流マネジメント」の逆襲 そろマリ
「バレンタイン流マネジメントの逆襲」読書感想文 ライトヒッティングな生活
読みました From Makuhari〜幕張の風
しかし今年、「どこからでも点が取れた日替わり打線」が「どこから始まっても点が取れない日替わり打線」に変わり、俊介や久保は低迷。若手選手は今ひとつの成績に終わり、極端な守備体系は相手に裏を突かれ、怪我人も続出。マリーンズは昨年の躍進が嘘のようにBクラスに沈みました。マリーンズ低迷の理由はいったいどこにあるのでしょうか。
■ 初芝GODの不在。
やはり今年の低迷は初芝様の不在を抜きに語ることは出来ないでしょう。
昨年初芝様はどんなに調子を落としても2軍に落ちることがありませんでした。つまりこれはバレンタイン監督が初芝様の価値を打棒以外に見出していたということです。初芝様の役目は常にベンチの盛り上げ役となりチームのムードを高めること。そしてここ一番の代打。初芝様がベンチでナインを見守ったからこそ若い選手たちが結果を恐れずプレーすることが出来たわけです。
そしておそらく、不平不満を口にせず、ベンチでチームを盛り上げつつベンチの裏で黙々と素振りを繰り返す初芝様を見て、バレンタイン監督の采配に不満を感じていた選手たちは、「初芝様があれだけチームのために頑張っているのだから、自分も不満を言うのはやめよう」と思い直したはずです。つまり初芝様の存在そのものが選手の采配に対する不満を解消する役目を果たしていた訳です。今年は昨年に比べチーム内の不協和音が何回も漏れ聞こえました。それは勝てなくなったこと以上に、初芝様がいなくなり、不満を抑えられるベテランがいなくなったということも大きく影響しているのではないかと思います。
■ WBCの影響
選手たちは否定しますが、残念ながらWBCの影響はありました。これは選手個人個人の調整の遅れ、というよりも、チーム作りの段階で8人もの選手が抜けてしまったことによる悪影響が大きかったと思います。本書にあるように、キャッチャーとサードとショートがいなければ守備の連携も取れませんし、バッテリーの呼吸も合いません。WBCに参加した選手と参加していない選手のモチベーションの差がチームの雰囲気に悪影響を与えてしまった面ももちろんあるでしょう。
■ 研究されたバレンタイン野球
勝ち続けるチームは当然研究されます。次々と繰り出される相手の対抗策を跳ね返し続けてこそ真に強いチームとなれるのですが、今年のマリーンズはどうだったでしょうか。相手に研究された結果、投手陣が崩されたり、こちらの裏をかかれることが目立ったのではないかと思います。
今年のマリーンズを見ていて、「ああ研究されているな」と感じたのはマリーンズの守備体系の裏をつかれる場面が増えたことです。去年は膨大なデータを元にして選手の守備位置を大胆に動かし、結果ゲッツーを量産してチームのピンチを救うことが出来ました。しかし今年は守備体系の逆を突かれて内野手の間を抜かれたり、あと一歩で追いつけずヒットにしてしまった、という場面が増えました。普通のチームなら内野を抜かれてもすぐには致命傷になりません。ですがここで問題です。ロッテの外野手は誰でしょうか。
1 フランコ
2 パスクチ
3 ワトソン
こういう面子が揃っているんですよ。そりゃ大惨事になります。とくに守備体系と言うのはあらかじめ打球の方向を想定して変更しますから、想定した方向と逆の方向に打球が来たらどうしても対応が遅れます。その上外野守備が壊滅しているんですから失点の可能性が飛躍的に上がってしまうのです。せめてサブローや大塚が毎試合外野を守れたら・・・。バレンタイン監督は外野守備を重視していないようですが、サブロー、大塚の不調はマリーンズ低迷の理由の一つに数えて良いと思います。
■ 機能不全に陥った日替わり打線。
もともと日替わり打線はスタメンを外された選手の不満を高めるという弱点があり、昨季は勝ち続けることによって不満が解消されてきたという面もあります。だから勝てなくなれば選手の不満は増大します。しかし、今年に限って言えば不満以前にそもそもスタメンで使える選手が9人揃わなかったという面もあります。サブロー、堀、橋本、大塚、フランコ・・・、不調の選手が多すぎますね。端的な例で言えば里崎と橋本。去年はツープラトン体制と言われ、里崎と橋本は交互に起用されました。そうすることによってリードにも幅が生まれ、マリーンズ投手陣の躍進を生んだのです。しかし今年は橋本の打撃不振もありキャッチャーはほぼ里崎で固定。橋本の打率が一割台前半ではやむを得ません。結果として里崎は規定打席に到達しホームラン17本と大きく成長しましたが、投手の成績降下にも微妙な影響を与えた面は否定できないでしょう。
それともうひとつ。バレンタイン監督は打順という概念をあまり重視しません。選手に求められるのは打順ごとに決められた役割を果たすことではなく、状況に応じてバレンタインに求められた仕事を果たすこと。つまりランナーのいない場面ではチャンスメークを、ランナーがいる場面ではランナーを進める役割を、チャンスではランナーを還す役割を求められるわけです。だからバレンタイン監督の野球ではホームランを量産できる長距離砲よりも、今江のような中距離打者が重宝されるのです。日替わり打線は選手が好調であればどこからでも点が取れる反面、不調の選手が多いと一気に迫力に欠ける、得点力の無い打線になってしまいます。バレンタイン監督もこのようなデメリットは把握しているでしょうから、打線の中に「不確定要素」を入れているのでしょう。例を挙げるなら去年のスンヨプであり、今年のパスクチです。スンヨプは30発のホームランを放ちチームの勝利に貢献しましたが、正直パスクチはあまり・・・、ですね。
■ 三者残塁無得点は拙攻じゃない、と言うけれど・・・
バレンタインのユニークな理論の一つに、「拙攻はマイナスではない」、と言うものがあります。「後一歩で点が取れなかった」のではなく、「点を取る一歩手前まで行った」とプラスの評価をするのです。しかし、周りの選手たちの考えは違うでしょう。相手も含めて。
「ピンチの後にチャンスあり」という言葉があります。ピンチをしのいだことにより精神的に楽になったチームが勢いづいて逆にチャンスをつくるシーンはよくあります。またチャンスを次々と潰していくと、「今日は点が取れないんじゃないか」と不安になったり、焦りから硬さが出てしまうこともあります。今年のマリーンズはチャンスを潰しまくりました。チャンスで何がしたいのかわからない選手が多すぎです。バレンタイン監督が言うベストのパフォーマンスと言うのは決して大振りすることじゃないんですが、選手達はそれが分かっていないか、分かっていても実行できないような状態に陥ったのではないかと思います。
■ バレンタインの期待に応えられなかった選手たち
『「バレンタイン流マネジメント」の逆襲』を読めばバレンタイン監督の選手に対する考え方が分かります。黒鴎さんの言葉を借りれば、「選手を駒として使い続けた」のです。しかし今年はその「駒」としての選手たちの成績が急降下、若手も台頭したとは言え満足な成績を残せていません。大松、青野はマシとしても、塀内、根元、正人、竹原、神田あたりは落第でしょう。バレンタインが判断した選手ごと能力値の範囲内で、ベストのパフォーマンスを発揮すること、これができた選手は、果たして何人いたでしょうか。
■ 打たなければ、勝たなければ。プレッシャーに押しつぶされた選手たち。
チームとしての目標も守るべきものも無く、帳尻と胴上げ阻止ぐらいしかやることの無かったチームに突如降りかかった「前年優勝チーム」の重圧。それがどれほどのものだったかは想像するに余りあります。7月以降の勝負どころで連鎖反応を起こしたかのように負け続けたマリーンズは、勝たなければという重圧にやられ、もがけばもがくほどドツボにはまっていったのでしょう。バレンタイン監督によるモチベーション管理もうまくいかなかったようです。本書を読めば分かるように、今年のバレンタイン監督はモチベーションの管理においても決定的な失敗を犯しています。
■ バレンタイン監督は外人偏重?
なぜバーンに二度目のチャンスを与えたのか、なぜフランコやパスクチを使い続けたか。これはよく分かりませんね。
■ バレンタインのワンマン体制は磐石なのか
本書を読むとチームに関するすべての情報が全権監督であるバレンタインに集まってくることが分かります。本書の言葉を借りればバレンタイン監督のワンマン体制、言い方を変えれば独裁体制です。去年はうまく行ったのでしょうが、ことしは疑問です。バレンタイン監督が一貫性のない采配を振るったときに意見できるコーチがいるのでしょうか。情報の収集と選手のコーチに終われるコーチ陣には無理なのではないでしょうか。「権力は腐敗する」という言葉があります。ワンマン体制は永続するものではありません。イエスマンばかり集めていてはやがて機能不全を起こします。バレンタイン独裁体制にはすでにあちこちでほころびが見られるのです。それをどこまで修正できるのか、それが来年の大きな鍵となるでしょう。先日のファンフェスではバレンタイン監督が球団の企画に背を向けてファンにサインをし続けました。すべての情報が集まってくるはずの監督が何故「私は企画の時点からタッチしていない」と怒るのか。球団の内部で何が起きているのか。来年がちょっと不安です。
色々書きましたが、とにかく『「バレンタイン流マネジメント」の逆襲』を一度読んで欲しいです。特に後半の今シーズンについての部分はこの本の肝ですよ。
すでに読まれた方の感想をピックアップしてみました。ご参考までに、こちらもどうぞ。
眠れないので思いの丈を書いてみる企画 関東黒鴎組通信 Returns
バレンタイン流マネジメント」の逆襲 そろマリ
「バレンタイン流マネジメントの逆襲」読書感想文 ライトヒッティングな生活
読みました From Makuhari〜幕張の風
細かい内容はうろ覚えなのですが、
「外国人選手は、短い期間の中で結果を残さないと、すぐに首を切られてしまうのではないかという焦りから、本来の力を発揮できないことがある。失敗しても繰り返し使うことで、『一度や二度の失敗で見切られることは無い』と理解させ、焦りをなくして本来の力を発揮できるようにさせる。」とか。
細かい内容は違うかもしれないので、一度読んでみることをお薦めします。