全長6.7キロ。漁港として名高い銚子の町をコトコト走るミニ鉄道、銚子電鉄。
その銚子電鉄が会社存続の危機を迎えています。


電車運行維持のためにぬれ煎餅を買ってください!!



電車修理代を稼がなくちゃ、いけないんです。



銚子電鉄商品購入と電車ご利用のお願い
拝啓、時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。 平素は、弊社鉄道事業並びにぬれ煎餅事業に対して、格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
さて、早速ではございますが、弊社は現在非常に厳しい経営状態にあり、鉄道の安全確保対策に、日々困窮している状況です。 年末を迎え、毎年度下期に行う鉄道車両の検査(法定検査)が、資金の不足により発注できない状況に陥っております。このままでは、元旦の輸送に支障をきたすばかりか、年明け早々に車両が不足し、現行ダイヤでの運行ができないことも予測されます。 社員一同、このような事態を避けるため、安全運行確保に向けた取り組むことはもちろんですが、資金調達の為にぬれ煎餅の販売にも担当の領域を超えて、取り組む所存でおりますので、ぬれ煎餅や銚子電鉄グッズの購入、日頃の当社電車の利用にご協力を賜りたく、お願い申し上げる次第でございます。

(銚子電鉄ホームページより引用)


鉄道存続のピンチを救うのになぜ煎餅?
それをこれから説明していきましょう。

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銚子電鉄はJR総武本線の終点銚子駅から外川までを結ぶローカル私鉄。大正12年の開業以来地域の足として走り続けてきました。しかしもともと路線の距離が短い上に沿線人口も少ないため、銚子電鉄の経営は厳しいものでした。その上最近は人口減少、特に少子化の影響による児童・学生の減少、マイカーの普及などの理由により、乗客数は昭和60年代以降減る一方。平成16年度の年間輸送人員は65.2万人と、昭和51年度の155.5万人から実に6割近くも減少してしまったのです。

乗客が減っても地域住民の大切な足であることに変わりはありません。過去に廃止を検討したことがあるようですが、地元住民の反対により撤回。その後銚子電鉄は徹底した合理化と、国、県、市からの補助により電車の運行を維持し続けました。

ところが、そんな銚子電鉄に試練が襲いました。

「地方の問題は地方で解決を」

国の地方交通に対する方針が転換され、鉄道軌道整備法に基づく地方中小私鉄に対する欠損補助金が97年をもって打ち切られることになったのです。収入の大部分を占める国からの補助金がなくなる。このままでは電車を運行できなくなってしまいます。沿線人口も乗客も減る一方。こうした会社存亡の危機を脱出するために考え出されたのがぬれ煎餅の製造販売でした。1枚約80円。

この一見地味な副業はリピーターを確実につかみ、銚子だけでなく県内のキオスクをはじめ東京のデパートでも売られるようになりました。今やぬれ煎餅は銚子電鉄の経営を支える屋台骨となり、鉄道の約2倍の利益を稼ぎ出しています。鉄道の赤字も、ぬれ煎餅の販売収入で穴埋めできるようになり、なんとか経営を維持できるようになったかに思われました。

しかし、またも試練が襲いました。90年より社長を務めていた内野氏が03年ごろに会社名義で1億950万円を借り入れたあげく全額を着服。内野前社長は業務上横領の罪で逮捕されてしまいました。内野前社長が経営していた内野工務店は98年に倒産、自身も自己破産していたため、内野前社長の借金を銚子電鉄が負う形になってしまったのです。

社員24名。ただでさえぎりぎりの経営を続けていたところに、新たに降りかかった1億円もの借金。おまけに横領が発覚したことにより銚子市の援助や銀行の融資もストップしてしまいました。もはや銚子電鉄には車両の法定検査にまわす資金すらありません。とにかく緊急に現金収入が必要です。そこで、銚子電鉄は増加が見込めない鉄道収入ではなく、注文数次第で多額の現金収入が得られるぬれ煎餅の購入をまず呼びかけたのです。


「電車の修理代のためにぬれ煎餅を買ってさい」
銚子電鉄のホームページに冒頭の一文が掲載されたのは11月17日のことでした。以来ネットを中心に「銚子電鉄を守ろう!」という声が高まり、全国各地からぬれ煎餅の注文が殺到。現在ぬれ煎餅の注文は一万近くに達し、テレビや新聞などマスコミにも取り上げられるまでになりました。会社の窮状をストレートに訴える文章、そして安易に寄付や募金に頼らずあくまで煎餅を売るという自らの努力で困難に立ち向かおうとする姿勢が多くの人々の心を打ったのでしょう。

しかし、努力の甲斐あってようやく1両目の電車を検査に入れることが出来た矢先に、追い打ちをかけるような事件が起こりました。

国土交通省関東運輸局による、業務改善命令です。

今回の業務改善命令は列車運行の安全確保対策の不備によるもので、銚子電鉄に対し社内の安全管理体制の確立と、施設の総点検、踏み切り堂の安全確保、腐食し折損した枕木や踏切保安装置の交換を求めています。来年1月末までに改善内容を報告できなければ最悪運行停止となってしまうかもしれません。存続への必死の努力に水を差すような改善命令ですが、銚子電鉄は平成7年に正面衝突事故を起こしています。事故が起きてからでは遅いのですから、枕木や踏切施設、バラスト(線路の下に敷かれた砂利)の補修など緊急に手を打つ必要があります。車検を受けていない電車2両分の検査費用がおよそ800万、そして改善命令に基づいた改修費用は2000万以上。果たしてこれだけのお金を用意できるのか。銚子電鉄はいよいよ正念場を迎えようとしています。

状況は大変厳しいです。なぜなら利用者の減少により地方公共交通は営利事業ではなくなり、自治体の援助によりかろうじて維持されている状態だからです。いくつかの地方鉄道は自治体の援助を受けながらも経営に行き詰まり、次々と廃止されていきました。

2002年7月31日 南部縦貫鉄道(青森) 全線廃止
2002年12月31日 有田鉄道(和歌山) 全線廃止
2005年4月1日 日立電鉄(茨城) 全線廃止
2006年4月20日 ちほく高原鉄道(北海道) 全線廃止
2006年10月1日 桃花台新交通(愛知) 全線廃止
2006年11月30日 神岡鉄道(岐阜) 全線廃止予定
2007年4月1日 鹿島鉄道(茨城) 全線廃止予定
2007年4月1日 くりはら田園鉄道(宮城) 全線廃止予定

ここ数年でこれだけの鉄道がなくなっています。過疎地域を走る路線がほとんどで、どれも観光で客を呼べない鉄道ばかりです。

「千葉は大都会だから大丈夫だろ?」
と思った皆さん。甘すぎです。
千葉県の南部と北東部では過疎化が進み、もはや公共交通の維持は自治体の援助無しに成り立ちません。千葉県北東部、成田や銚子周辺を地盤とする千葉交通というバス会社は乗客数が20年間で約3分の1になりました。もはや自治体の援助だけでは経営が成り立たず、経営合理化のため不採算路線を毎年のように廃止し続けています。いまや都市部以外のバス路線はほとんどが自治体の援助で運行される廃止代替バスか、自治体が直接運行するコミュニティバスとなってしまいました。

バスがこれだけ厳しいのですから、バス以上にお金がかかる鉄道事業を維持するのは非常に困難と言わざるを得ません。今後乗客が減ることはあっても、増える可能性はほとんど無いからです。観光路線として生きるか、副業の更なる拡大か。仮に今回の危機を脱したとしても、銚子電鉄存続の道は茨の道となるでしょう。

このような状況にもかかわらず、地域のために路線の存続に向けて努力する社員の方の姿勢には頭が下がります。瀕死の地方公共交通は、こうした方々の熱意と使命感によって維持されているのです。銚子電鉄の明日への努力を無駄にしてはならない。銚子電鉄の社員の方の思いになんとかして応えたいと思います。

銚子電鉄に乗りに行く。
ぬれ煎餅を買う。

銚子電鉄存続のために、自分にできることはこれぐらいです。
ぬれ煎餅は総武線のキオスクや、リブレ京成、船橋のフェイスビル、東京駅の大丸などで売っているようですね。私は千葉駅のキオスクで買いましたが、癖になるおいしさですよ。電子レンジで暖めるとよりおいしいです。バターを溶かすのもいいです。このブログをお読みになり、銚子電鉄に興味をもたれた方はぜひともぬれ煎餅を味見してみてください。当ブログからのお願いです。


【リンク】
銚子電鉄公式
銚子電鉄の社員の方のブログ
「電車修理代を稼がなくちゃ、いけないんです。」銚子電鉄緊急応援Wiki
save the銚子電鉄 @ ウィキ

【ニュース】
「ぬれ煎餅買って」 経営難の銚子電鉄がSOS (朝日)
「ぬれ煎餅買って」 貧乏電鉄会社の悲痛 (J-CAST ニュース)
ネットで「銚子電鉄を救え」 名物「ぬれ煎餅」に注文殺到 (ITmedia)
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