イギリス紀行2006 〜英国紳士への道〜 第4回
ロンドンのバスに乗る
 

ロンドンバス

2日目 2006年2月23日 (木)
今日は一日ロンドン観光。二階建てバスに乗り込みロンドン市内へ向け出発です。



4.ロンドンのバスに乗る

 6時半に起床。朝食を食べに2階へと降りる。レストランは早朝ながら席の7割が埋まっている。受付の女性に名前を告げると何か言ってきた。どうやらここでイングリッシュ・ブレックファストを食べるには8ポンドの追加料金が必要になるらしい。そういえば日程表に朝食はコンチネンタルと書いてあった。コンチネンタルはパンと飲み物だけ。つまりあったかい朝食を食べたければ1600円払えということだ。

「どうする?8ポンド払うか?」
「うーん朝食から8ポンドも払うのはちょっとなぁ。1600円だろ?」
「だよなぁ。腹を膨らませるなら駅の中のサブウェイあたりで食べればいいんだし」
「じゃあパンで決まりな」

 8ポンドは払わない旨を告げると、受付の女性が我々の後方を指差してあちらで食べろと案内してくれた。見るとホテルの出口の横にカフェのような一角があり、その入口にある机の上にパンが山盛りになっている。女性にサンキューと礼を言い、カフェのある一角に向かった。中に入ってもカウンターの女性が何も言ってこないので、きっとここはセルフサービスなのだろう。机の上のバスケットに山盛りになったパンを3つほど皿に取り、空のコップにオレンジジュースを注ぐ。盛況のレストランとは違いこちらは人もまばら。中年女性がコーヒーを飲みながら新聞を読んでいるぐらいだ。
 空いている席に座り、パンを食べる。菓子パンのようだが結構うまい。しばらくすると若い女の子のグループが朝食を食べにやってきた。「このパン勝手に取ってもいいのかな?」と言っているので日本人だろう。するとカウンターにいた女性が彼女らに歩み寄り英語で説明をしている。なにやら「ノットセルフサービス」という言葉が聞こえてきた。

「おいおいセルフサービスじゃないらしいぞ」
「遅いよ。もう食べちまった」

 カウンターの女性は席に座った日本人女性のグループにパンを盛り付けると、今度はこちらに向かってきた。お茶を淹れてくれるらしい。私は紅茶を、友人はコーヒーを頼む。しばらくするとカップが二つに小さなポットが運ばれてきた。ポットにはティーバッグが入っている。うーん。

 朝食を終えて部屋に戻り、出かける準備をした。今日はまずヴィクトリア駅近くのみゅうインフォメーションセンターでバスと地下鉄の一日券とフィッシュアンドチップスの食事券を受け取り、その後ウエストミンスター寺院、バッキンガム宮殿、ハロッズ、大英博物館などを巡る予定だ。ヴィクトリア駅には地下鉄でも行けるのだが、時間に余裕があるので二階建てバスに乗って行きたい。地下鉄は景色が見えないので面白くない。その点バスならロンドンの街並みを堪能できる。
 ロンドンのバスは複雑怪奇といわれる。なにせ600を越す路線がロンドン市内を走り回っているのだ。大きなバスターミナルの案内窓口でバスの路線図をもらえるが、それを見てもどの系統がどこの道を走っているかしか分からず、バス停の名前や位置が分からない。それゆえロンドンの初心者にはとっつきにくい存在だったのだが、今はインターネットがある。ロンドン交通局のホームページを見れば一つ一つのバス停がきちんと掲載された路線図をダウンロードすることができる。これを見れば目的地へ行くのにどこのバス停から乗っていくつ目のなんと言うバス停で降りればよいか一目瞭然だ。しかもThe Greater London Bus Mapという個人サイトを見ると系統ごとの時刻表まで載っている。所要時間まで分かるすぐれものだ。あらかじめ行くところが決まっていれば、必要なところだけ印刷してイギリスに持っていけばいい。便利な時代になった。

 出かける準備を済ませ、ハンマースミス駅に向かった。ハンマースミス駅はバスターミナルが併設され、各方面へのバスが次々と発車している。目当てのバスはここから昨日チェルシーの試合のあったスタンフォードブリッジの脇を通りヴィクトリア駅方面に向かう211番系統だ。案内板を見るとD乗場から発車するとのこと。たくさん乗り場があるが、大きなアルファベットの看板があるので分かりやすい。

 ロンドンのバスは日本のように乗ってから料金を払うのではなく、あらかじめバス乗り場で切符を買わなければならない。ちょっと前まではバスに乗った後に車掌から切符を買うのが一般的だったのだが、2004年から乗車前に切符の購入が必要になった。車掌が乗務し飛び乗り飛び降り可能なオールドタイプの二階建てバス、「ルートマスター」は昨年暮れにロンドンの一般路線からは引退し、今はどのバスもワンマンとなっている。ハンマースミスのバスターミナルでは乗り場ごとに切符の自動販売機があり、1.5ポンドの乗車券か3.5ポンドの一日券を買うことができる。しかしこの券売機が非常に不便な代物で、お札が使えず、お釣りも出ない。あいにく小銭の持ち合わせがないため別の場所で買うしかなさそうだ。バスの案内窓口で「バスのチケットはありますか?」と聞いてみたところ、売店に行けと言われてしまった。ロンドン市内中央部のバスマップだけもらい、売店を探した。

 窓口氏の言う売店はターミナルの隅にあった。インド系とおぼしき店員に声をかける。彼の英語はほとんど聞き取れなかったが、チケット自体は売っているらしい。とりあえず「イエースプリーズ」と答えて5ポンド札を渡す。すると店員はなにやら端末をたたき出した。「あれ?そういえばワンデーと言っていた気がするぞ。ひょっとしたらバスの1日乗車券を買ってしまったか?」と思っていたら、案の定3.5ポンドのバス1日券とおつりの1.5ポンドが返ってきた。替えてもらおうかとも思ったが、自分の英語力に自信が無いし、またバスに乗る機会もあるだろうからそのまま退散した。しばらくすると友人も売店から戻ってきた。見ると切符ではなくお菓子と新聞を持っている。「売店では1日券しか売らないって言うから小銭崩してきたよ」とのこと。しまったその手があったか。

 ともあれチケットは無事購入できたのでベンチに腰掛けバスを待つ。平日の朝だけあって通勤客と学生でいっぱいだ。女子高生が騒がしいのは日本と同じか。次から次へとバスが来るものの、お目当てのバスはなかなかやってこない。待っている間友人に新聞を見せてもらう。先日のチェルシー対バルセロナ戦の記事が1面だ。大きな見出しで「メッシは汚い犬!」と書いてある。バルセロナのメッシが何かやらかしたのだろうか。映像を見ていないので分からない。
 10分ほど待ってようやく211番のバスがやってきた。始発なので2階席の一番前に座ることができた。つまり展望席だ。ヴィクトリア駅までは約40分。窓の曇りをティッシュで拭きながら前方の景色を堪能する。バスは片側1車線の曲がりくねった道を進んでいく。ハンドルさばきはかなり荒く、しょっちゅう急発進や急停止する。驚いたのは車間距離。信号待ちで止まっている車の後ろにぴったりつける。おそらく30cmもないだろう。バス停の間隔はかなり短く、ほとんどのバス停で客の乗り降りがある。日本と異なり案内放送が無いため、降りるバス停は自分で判断しなければならない。ただ主要停留所はほぼ間違いなく停車するし、スピードがあまり速くないのでバス停の名前は車内から確認可能だ。これならば大きく乗り過ごすと言うことは無いだろう。

 ターミナルを出たバスはハンマースミスのオフィス街を抜け住宅地に入る。しばらく走るとチェルシーの本拠であるスタンフォードブリッジが見えてきた。実は私と違って乗り物にあまり興味の無い友人が地下鉄より時間のかかるバスの利用に同意したのは、「このバスに乗るとスタンフォードブリッジが見られるんだぜ?試合見る前に一回拝んでおきたいだろ?」と誘ったからだ。案の定友人は「ここで昨日の夜にバルサとチェルシーが戦ったのか」と感激することしきり。今は朝だけに人気が無いが、昨晩はここが人で埋まったのだろう。土曜日のサッカー観戦が楽しみだ。
 バスはやがてダウンタウンに入り、ビクトリア駅に到着した。バスを降りると雪が降っている。昨晩の天気予報では今日は晴れるはずだったのに、ロンドンの天気はあてにならない。傘を差しつつみゅうインフォメーションセンターに向かって歩き出した。みゅうは駅に隣接するショッピングセンターの中にあり、日本人の係員が旅行客の応対をしている。ここで我々はイギリス名物フィッシュアンドチップスの食事券と地下鉄とバスの1日券を受け取った。フィッシュアンドチップスの予約は今日の午後8時にした。ビクトリア駅近くのお店で食べられるとのことで、係員が持っていた地図に印をつけてくれた。

 これで用は済んだのだが、気になることがある。それは鉄道の時刻表だ。明日はロンドンから鉄道に乗ってバースやオックスフォードに向かう予定である。インターネットで乗る列車などは事前に調べてあるが、予定通りにいくとは限らないので時刻表がほしい。それで昨日から本屋で時刻表を探しているのだが、一向に見つからないのだ。本屋の店員さんに聞いても、「ここじゃ分からないから鉄道の駅に行って聞いてみれば?」と言うばかり。みゅうの店内に鉄道の時刻表が置いてあるのでどこかに売っているのは間違いない。カウンターの女性に尋ねてみた。日本語で話せるのはありがたい。

「鉄道の時刻表を探しているんですけどなかなか置いてある本屋が見つからないんですよ。どこも駅に行けって言うばかりで・・・。ビクトリア駅なら売っているんでしょうか?」
「いえ、本屋で買えますよ。ここの隣のショッピングセンターに本屋がありますから、そこに売っているはずです」

なるほど、駅に近い本屋なら売っているのだろうか。ひとまずお礼を述べて店を出た。教えてもらった本屋はかなり大きく、遊戯王など日本の漫画も売っている。旅行ガイドのコーナーも充実しており、ここならありそうだと思ったのだが見つからない。店員に聞いても売っていないと言う。困った。やはり駅に行くしかない、ということでヴィクトリア駅の構内に入った。駅は非常に広く、大きなドーム型の屋根の下に様々な行き先の列車がひしめいている。改札口の上には横長な巨大電光掲示板があり、これから出発する列車の行き先や発車時刻、発車番線、途中停車駅がずらずらと表示されている。恐ろしいのは15分後に出発する列車のホームが表示されていないことだ。イギリスの鉄道は発車直前までどのホームから出発するのか分からないシステムなのだが、15分前になっても分からないのは困る。よく見ると遅れている列車もあった。日本よりも運行形態がかなりいい加減だ。あるいは日本が異常に正確すぎるのかもしれない。

 駅構内には売店やフードコートやサンドイッチ屋、レストランまである。本屋もあったので入ってみたらさすがに駅の中、探していた時刻表がついに見つかった。A5サイズで2752ページもある。電話帳よりも分厚い。お値段は12ポンド、約2500円だ。嬉しいのはイギリス全土の路線図が付属していること。これさえあれば、駅の切符売り場で路線図を指差しながら、「この駅からこの駅を経由してこの駅まで行く片道切符を2枚くれ」と言える。私の発音がどんなに拙くても間違えられることは無いだろう。喜び勇んでレジに持って行き会計を済ませた。漬物石のように重いが気にせずリュックに放り込んだ。

バスの車窓1
二階建てバスの車窓から

バスの車窓2
同じく2階建てバスの車窓から

バスの車窓3
二階建てバスの車窓から。バスは住宅街を行く。

ヴィクトリア駅内部
ヴィクトリア駅

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