イギリス紀行2006 〜英国紳士への道〜 第16回
バーススパ駅からオックスフォード駅へ

3日目 2006年2月24日 (金)
バース観光を終えた我々はオックスフォードへ向かいます。
16. バーススパ駅からオックスフォード駅へ
バーススパ駅に戻った頃には12時を回っていた。昼食の時間だが、その前に切符だ。オックスフォードへは駅前のバスターミナルからバスが出ており、こちらのほうが安い。しかし案内所で次のバスの時間を聞いたところ16時までないとのこと。つまり列車に乗るしかない。ひとまず駅の自動券売機で二人分の切符を買うことにした。
「あれ?値段が2種類あるぞ」
「オックスフォードまで35ポンドって書いてある。これは・・・レディング経由なのか?」
「もう一つは、おっ、10.4ポンドだとよ。ずいぶん安いな。それにCheapって何だ?貧乏人専用ってことか?」
「いやさすがにそれはないと思う。でもずいぶん値段が違うよな。どっちなんだろ」
「経由地の違いだと思うが・・・。とりあえず駅員さんのいる窓口で切符買うか?」
「そうだな」
分からない時は聞いた方が早い。幸い窓口は空いている。少々順番を待ち、窓口のカウンターに持参した路線図を広げつつ質問してみた。
「すみません。バーススパ駅からディドコットパークウェイ駅を経由してオックスフォードまで行く片道切符を買いたいのですが?」
「オックスフォードまでですね。10.4ポンドです」
「10.4ポンドでいいらしいな。(日本語)」
「じゃあ2枚ください。カードで」
「はい、これが切符です。どうぞ」
「次の列車は何時何分発ですか?」
「12:42発です。2番線ですよ」
「わかりました。サンキュー」
その時は忘れていたのだが、実はイギリスの鉄道は朝の通勤時間帯が過ぎると料金が安くなるのだ。Cheapというのは日本で言えばオフピーク割引だろう。運賃が2種類表示されたのは経由地が違うからで、最短距離のディドコットパークウェイ経由が10.4ポンド。レディング経由が35ポンドである。時刻表を見ると乗換駅ディドコットパークウェイを通過する列車があるので二つ表示されていると思われる。レディングはディドコットパークウェイの先にあり、ディドコットパークウェイを通過する列車に乗ると結構な距離を往復することになってしまう。日本で言えば、上越新幹線から長野新幹線に乗り換えるのに高崎で降りずに東京まで行くようなもの。高いはずだ。
切符を買ったが、次の列車まではあと30分ほど時間がある。腹が減ったので昼食にしたいのだが、とかくイギリス人の仕事は遅いので店での昼食はためらわれる。料理が出てくる頃には列車が行ってしまう可能性が高いからだ。できれば簡単に食べられるものを、と駅周辺をうろうろしていたら、駅前のショッピングセンターの中にマクドナルドを見つけた。これならばすぐに食べられるだろう。
店内は若干混み合っていたが、店の作りは日本と同じだ。カウンターで注文して、トレイを持ってテーブルを探せばよい。日本と違うのはバーガーを頼むとパンの色を黒か白か選べること、店員に愛想がないこと、後は少々高いことだろうか。イギリスじゃスマイルは100ポンドだろう。私は日本には無さそうなローストビーフのバーガーとポテトとドリンクのセットを買った。しめて4ポンド。約800円だ。店の二階に上がると学生と思しき男女の集団が座っていた。ほとんど食べ終わっているらしくあちこちうろつきまわって騒がしい。列車の時間まで20分少々なのであまり時間が無い。我々は甘ったるいジュースでハンバーガーとポテトを胃に流し込み、小走りで駅に戻った。
ホームへ続く階段を駆け上がるとすでに多くの観光客がロンドン行きの列車を待っている。ふと見回すと妙な店があった。「JAPANESE MISO SOUP」、「HAND MADE SUSHI」と書いてあるから味噌汁と寿司を出す飲食店なのだろうが、店名が怪しい。出汁と書いてdashiと読ませている。しかしガラス張りの店内を見ると日本の「おーいお茶」が売っている。案外ちゃんとした店なのかもしれない。話のネタにここで食べればよかったと後悔したがもう時間が無い。ほどなくロンドン行きの列車がホームにゆっくり入ってきた。約2分の遅れ。イギリス基準なら遅れのうちに入らない。窓に貼り出された停車駅の一覧にディドコットパークウェイの文字があることを確認し、列車に乗り込んだ。
昼のやわらかい日差しを受け、列車は快調に飛ばしていく。行きに乗ったのと同じタイプの、ドアを手で開ける特急列車だ。チッペンハム、スィンボーンと停車するうちに遅れを取り戻し、乗換駅のディドコットパークウェイ駅には定刻の13:29に到着した。時刻表によれば次の列車は13:52。20分あるのでホームで少々待つことになるはずだ。ところがロンドン行きの列車を降りるとすぐに反対側のホームに短い列車が入ってきた。駅の案内表示を見るとオックスフォードの文字がある。急いで乗り込むとすぐにドアが閉まった。どうやら1本前の13:24発の列車が遅れていたらしい。これはラッキーだ。当初予定よりもだいぶ早くオックスフォードにつけそうである。
空いている席を見つけて腰を下ろす。列車は先ほどまで乗っていた特急型の車両ではなく、近郊型タイプのディーゼルカーだ。日本で言えば関西の新快速、京急の快特のつくりに近い。両開きのドアが2つあり、向かい合わせの椅子が並んでいる。時々小さな駅が現れるのだがものすごいスピードで通過する。オックスフォードまで止まらないようだ。車内では清掃の兄ちゃんがゴミを拾っている。我々の横を通り過ぎると、前の車両へ通じる自動ドアのボタンを、さっきまでゴミをつかんでいた鉄バサミの先っちょで押した。横着というか、非常に汚い。そうこうするうちに列車のスピードが落ちてきた。ディドコットパークウェイ駅から約15分。今日第二の目的地であるオックスフォード駅に到着した。

ロンドン行きの列車が入ってきた。

出汁と書いてdashi。日本食を売る店らしい。

dashiの看板。

晴れてきた。

駅前には必ず教会がある。

乗り換え駅のディドコットパークウェイ駅に到着。

オックスフォードまで乗ってきた列車。
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