イギリス紀行2006 〜英国紳士への道〜 第29回
スタンフォードブリッジを探検
 

スタンフォードブリッジ

4日目 2006年2月25日 (土)
チェルシーの本拠地、スタンフォードブリッジに到着です。


29.スタンフォードブリッジを探検

 地下鉄の電車は相変わらずのんびり走り、こまめに駅に止まる。駅に止まるたびに乗客が増えていく。ほとんどがサッカーを見に行く客だ。熟年夫婦から子供づれまでが実に楽しそうにしゃべっている。イギリスのサッカーは決して若者だけのものではないのだ。30分ほど走りウインブルドン方面への分岐駅であるアールズコート駅に着いた。試合開始まで2時間ほどあるが、ホームはすでに人で埋まっている。ドアが開くや否やチェルシーサポーターが大挙して乗り込んできた。あっという間に車内が青く染まる。どの客も妙にテンションが高い。我々の近くに立った若者グループもなにやら熱く語り合っている。英語なので内容はさっぱり分からないが、さっきからファ○クだフ○ッキンだの連発しているのは何なのだろうか。スタジアムのあるフルハムブロードウェイ駅に着くまで30回ぐらいは連呼していたと思う。とにかくワンフレーズごとに放送禁止用語が出てくる。何をしゃべっているのか非常に気になる。

 やがてフルハムブロードウェイ駅に着くと、満員の客のほとんどがここで下車した。人ごみにもまれながらぞろぞろと階段を上がり、自動改札を出た。サポーターは日本同様おとなしく、サポーターズソングを歌いながら騒がしく改札を抜ける、ということはなかった。

 このままスタジアムに行ってもいいのだが、現金の持ち合わせがない。グッズショップでお土産を買い込まないといけないのに、もしカードが使えないとなれば困ったことになる。両替できる場所を探してしばらく歩き回ったところ、メーンストリート沿いにバークレーというイギリスの大手銀行を見つけた。幸い土曜日でも両替の窓口は開いており、何人かが列を作っていた。しばらく並んだのち、窓口の女性に1万円札を見せる。するとこの女性職員は1万円札を手に取るなり顔をしかめ、透かして見たり、偽札チェッカー用のマーカーを引っ張ってみたり、隣の男性職員に何事か尋ねたりしている。どうやら1万円札を見たことがないらしい。サッカー観戦でこの界隈を訪れる日本人は多いだろうし、見たこと無いと言うのはにわかに信じがたいのだが、ひょっとすると配属されたばかりなのかもしれない。少々待たされたのち、1万円札は46.28ポンドになって帰ってきた。レートは1ポンド216.0975円である。

 懐の心配がなくなったところでスタジアムに向かった。人の流れについていけば良いので迷うことはない。地下鉄駅から数分のところに入口があり、グッズやホットドッグやマッチデープログラムが売られている。マッチデープログラムは3ポンドするが、マッチデーマガジンを名乗るだけあって非常に立派なものだ。全74ページフルカラー、写真がふんだんに使われ、3日前に行われたばかりのチャンピオンズリーグの結果も詳細に取り上げている。驚いたのは対戦相手であるポーツマスの紹介に5ページも使われていること。主な選手の紹介やシーズンの戦いぶり、戦術やフォーメーションの解説まである。スター選手としてMFのオニールの紹介があり、写真が1ページぶち抜きで使われている。敵チームの紹介としては破格の扱いだ。日本じゃここまで充実した内容のものはおそらくないだろう。私はイギリスに来て初めて高くない買い物をした。3ポンド以上の価値は充分にあると思う。

 スタジアムの外を一回りしてスタジアムの正面に出た。スタンフォードブリッジはチェルシータウンと呼ばれスタジアムにホテルやレストランが併設されている。日本でいえば福岡のホークスタウンのようなものだ。中でもひときわ賑わっているのが地上2階建てのグッズショップである。入口と出口が分かれており、我々は人ごみを掻き分けながらショップへの入場列を探した。

 店内はものすごい人ごみだ。おそらく日本の野球場のどのグッズショップよりも大規模だろう。1階はTシャツや帽子やマフラー、キーホルダーなどの小物類、タオル、文具、食器、リュック、かばん、おもちゃなどが売られている。特にティーシャツやマフラーは半額セール中だ。Tシャツのデザインはどれも非常にかっこよいのだが、あいにくどれも大きすぎる。一番小さくてXLだ。さすがのイギリス人もそこまで巨大な人間は少ないようで、まともなサイズは全部売れてしまっている。部屋着にすればよいのでティーシャツは1着だけ選び、他にはマフラーとニットの帽子を買った。

 エスカレーターで2階に上がると広いフロアにユニフォームやジャージやコート類が所狭しと並んでいた。友人が探していたレインコートはどうやら売ってないらしいが、ユニフォームだけでも有名選手10名ほどのレプリカユニがずらりと陳列されている。圧倒される品揃えだ。店の奥にはユニフォームの背中に文字と背番号をアイロンプリントしてくれる一角があり長蛇の列が出来ていた。カウンターにはアイロンプリントの台が6台並んでおり係の店員らが次から次へとプリント作業をこなしている。売り物の背番号入レプリカユニフォームもそこで作られているのには驚いたが、とにかくそこに並んで14ポンド払えばなんでもプリントしてくれるのだ。ロッテファンの我々が文字を入れるとすれば当然神と称されるあのお方しかいない。こういうネタに敏感な友人は早速列に並び、「HATSUSHIBA 6」とプリントしてもらっていた。ついにミスターロッテの初芝清が英国紳士となった瞬間である。

 初芝ユニの作成というグッズショップでのメインイベントを済ませ、レジの大行列に並んだ。15台ほどあるレジはフル稼働で大量の客をさばいている。イギリスの他の店と違ってここはなかなか手際がいい。どの客も買い物カゴ一つで抱えきれない量のグッズを買っているので大変だろう。幸いここではカードが使えたので小銭のチョイスで悪戦苦闘せずに済んだ。

 グッズショップを出ると明らかに人が増えていた。試合開始が近づくにつれ、周囲の熱気も上がってきたようだ。我々はチケットを取り出し目的の入場列を探した。すでに各ゲートで入場が始まっており、動物園にあるような厳重な回転扉を前に長い行列ができている。扉の前には黒人のガードマンが立ちはだかり、金属探知機を手にして入念なボディチェックを行っている。私の前の白人男性はやけに厳重なチェックを受けており、金属探知機であちこち撫で回した後ポケットの中を調べ、荷物の中を入念にかき回されていた。私も色々調べられるのだろうか。別にやましいところはないのだがなんとなく身構えているうちにいよいよ順番が来た。すると予想に反して私のチェックはやけにあっさり終わってしまった。金属探知機でささっとなで、荷物の中に手を入れただけである。「えっ?これで終わり?」と戸惑っていると、「Go!Go!Go!Go!」と警備員にせきたてられた。

 スタジアムに入ると広い通路があり、売店などが並んでいた。日本と違うのは公認のブックメーカーの存在で、つまりスタジアム内の店で賭けが出来るのだ。あたりは人でいっぱい。照明が少なく、通路は暗い。観客は若い男性だけでなく、小さな子供をつれた家族連れ、老夫婦、実に様々だ。それが試合前からこぞってビールを立ち飲みしている。この寒い中何杯もビールを飲んだらトイレが近くならないのだろうか。我々は腹が減っていたので売店でホットドックを買った。もっとちゃんとしたものがあるかと思ったのだが、観客席では飲食禁止らしく、球場内の売店でも軽食しかないらしい。ホットドックを食べながら球場モニターを眺めているとスターティングイレブンが発表されている。ドログバなどの名があるが、グジョンセンやマケレレ、クレスポはベンチスタートらしい。試合開始が近づいている。そろそろ席に座ったほうがいいだろう。

スタジアム入口付近のマッチデープログラム売り場
スタジアム入口付近のマッチデープログラム売り場


マッチデープログラム表紙
マッチデープログラムの表紙


アウェイチームの紹介
アウェイチーム・ポーツマスの紹介


アウェイチームの紹介2
アウェイチーム・ポーツマスの紹介


3日前に行われたバルサ戦の解説
3日前に行われた欧州チャンピオンズリーグ、チェルシー対バルセロナの解説


初芝ユニ1
初芝ユニを作ったよ!


初芝ユニ2
はっつしば!


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