かなり前の記事で恐縮なのですが、こんなニュースがありました。

バレンタイン、日本球界におっカネ〜“口”撃 (ZAKZAK)

「米球界が向こうの選手より(日本人選手を)高く認めて受け入れている。米国の方が経験豊富な選手の価値を理解できているということ。それは日本球界が米国に匹敵したレベルにあることを証明しているんだ」
「野球ビジネスの面でもレベルを高く上げる必要がある。選手が残りたいと思う環境をつくらないといけない」
「ロイヤルズは、どこをどう比べても、ロッテより劣る。観客動員も少ないし、選手のタレントもロッテの方が上。それでも薮田に対し、ウチの倍以上の提示ができる。MLBが収益を各球団にシェアするシステムがあり、それが獲得資金を生み出している」
「日本のメディアは中継のためにMLBに50億円も払っている。本当ならこのお金は日本球界の資金力を高めるものになるべき。こんなクレージーな状況は改善するべきだ」

バレンタイン監督の意見はまったく正論です。メジャーで名を成した監督がこんなことを言うのは皮肉な話ですけどね。
ただ、ロイヤルズがマリーンズよりも観客動員数で劣るという部分が気になりまして、「本当かよ?」と調べてみた結果が「米メジャーリーグ・マイナーリーグ チーム別観客数一覧表 2007」です。メジャーだけのはずが、気づいたらこうなっていました。

さて、まずはマリーンズとロイヤルズの観客動員数を比べてみましょう。

チーム名 観客動員数 1試合平均 球場定員 動員率
千葉ロッテマリーンズ 1,558,430 21,644 30,200 71.7%
Kansas City Royals 1,616,867 19,961 40,793 48.9%

観客数そのものはあまり差がありません。ただし、マリーンズが球場を7割方埋めているのに対し、ロイヤルズは半分も埋められていません。4万人規模のスタジアムに平均2万の観衆ですから、テレビで見ればガラガラでしょう。ちなみに、ロイヤルズの観客動員数はMLBで下から3番目。平均を大きく下回っています。

一方、MLB全体の観客動員数はここ数年はっきりと増加傾向にあります。2001年の全チームの観客動員数が72,566,108人、2007年の観客動員数は79,493,687人。なんと7年で6,927,579人も増えているのです。MLBのビジネスモデルは確かに日本よりも進んでいますけれども、それはたくさんのファンがいてこそです。巨額の利益の元となるお金はファンが出すものですしね。リーグ一丸となったビジネスモデルの構築とファン増加は車の両輪なのです。日本の場合セリーグの某チームが障害となり、なかなかNPB一丸とは行きません。瀬戸山さんらを中心にパリーグでまとまる動きはありますから、パリーグとして確固たる成果をつきつければ、セリーグの某チームも動くでしょう。

そして私が最も驚いたのはアメリカマイナーリーグの観客動員です。
AAAの場合18球団中19球団が球場定員の5割超、8球団が7割超もの観客を集めています。中にはOttawa Lynxのように1試合平均1922人と不人気チームもありますが、このチームは今年からペンシルバニア州に移転しLehigh Valley IronPigsとなります。
さらに、その下のAA級やA級でも毎試合球場が満員となるチームがあるのです。例えばA級のDayton Dragonsは1試合平均8608人、A級はいわば5軍ですよ。日本じゃ考えられません。この凄まじいまでの裾野の広さこそ、アメリカ野球を支える屋台骨なのですね。
Baseball Parks of the Minor Leaguesというホームページを見るととても面白いです。マイナーリーグのチームは、MLBの親球団が払う選手の給料以外、例えばチームや球場の運営費などを自分たちで稼がねばなりません。だからファンサービスも熱心に行いますし、子供たちに対するアプローチも積極的です。その結果マイナーリーグのどんな球場にもちょっとシュールなマスコットが必ずいて、球場に足を運ぶ多くのファンがいます。地域の中で「おらが町の球団」としてしっかりと根付いているのですね。日本では鎌ヶ谷やシーレックスが同様の方向性を探ろうとしていますが、なかなか道は遠いです。せっかく独立リーグも生まれたのですから、NPBの2軍もテコ入れするチャンスです。裾野を広げることは日本野球の今後のためにも必要なことだと思います。

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