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オーストリア旅行記の第13回です。
3日目から鉄道旅行が本格的に始まります。
まずは世界遺産のセメリンク鉄道を通ってアルプス越えです。


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9月18日日曜日。
朝5時半起床。外は真っ暗です。
今日はウィーンから鉄道で世界遺産の村ハルシュタットに向かい、夕方にザルツブルクへと到着する予定となっています。
普通に乗ればウィーンからザルツブルクまで3時間でつきますが、わざわざ1日かけて大回りするのは、セメリンク鉄道という世界遺産に指定されたアルプス越えの区間を通りたいからです。

セメリンク鉄道と言っても独立した鉄道会社ではなく、1854年に完成したオーストリア国鉄の一路線です。
その一路線に過ぎないセメリンク鉄道がなぜ世界遺産に登録されたのか。
それは、この路線が初めてアルプスを越えた鉄道であり、世界初の山岳鉄道であるからです。

セメリンク鉄道はウィーンの南西にあり、グロッグニッツ駅とミュルツツーシュラーク駅間の全長41.825キロの区間を指します。
アルプスを駆け上がるため高低差は460メートルもあり、途中14のトンネル、16の高架橋、100を超える石橋と11の鉄橋があります。特に石造りのアーチ橋の美しさは特筆もので、オーストリア国鉄の鉄道写真では必ずここが出てきます。
現在のセメリンク鉄道はウィーンとオーストリア南部を結ぶ主要幹線の一区間であり、グラーツやフィラッハなど南部主要都市への列車や、スロベニアやイタリア方面への国際列車、国際夜行列車など多数の列車が走っています。
本数もそこそこ多く、特急が1時間に1〜2本。普通快速列車が1〜2時間に1本程度です。ただし、2012年12月のダイヤ改正によりセメリンク峠のセメリンク駅(Semmering)〜ミュルツツーシュラーク駅(Mürzzuschlag)間の普通・快速列車が全廃され、この区間を走るのは特急のみ、普通列車は2時間おきの代行バス輸送となりました。日本でいえば石勝線のような、特急しか走らない区間です。
つまりセメリンク鉄道を特急で通過する場合は問題ありませんが、普通列車の場合は途中区間がバスによる代行となりますから乗り換えが必要になります。
近年オーストリアでは閑散区間を特急のみの運行とし、普通列車と小駅を全廃してバスによる代行輸送とするケースが増えているそうです。山間のローカル線を鈍行でのんびり旅したい場合は、早めに乗っておいた方がよさそうですね。


さて、今日の日程はウィーンからセメリンク鉄道を通って南へと向かい、途中のレオベン駅(Leoben Hbf)とシュタイナッハ−イルドニング駅(Stainach-Irdning)でローカル列車を乗り継ぎ世界遺産のハルシュタットを訪れ、再び列車を乗り継いでザルツブルクに至る予定です。
総移動距離は445キロあり、半日がかりの大移動になります。
今日のザルツブルク周辺は午後から雨が降るとの予報。できれば雨が降らないうちにハルシュタットに着きたいものです。
ハルシュタット散策の時間を考慮すると、どうしても早朝の出発にせざるを得ませんでした。

朝6時前にホテルをチェックアウトしました。
宿代は16日が129ユーロ、17日が139ユーロです。少々高いかもしれません。
ウィーン西駅から地下鉄U6線に乗ってウィーンマイドリング駅(Wien Meidling)へ。幸い日曜の早朝でも7〜8分間隔で運行されていました。土日の6時台に20分も間隔があいているおかげで大混雑の総武快速はウィーン地下鉄を見習うべきです。

ウィーン西駅からウィーン・マイドリング駅に直結するフィラデルフィアブリュッケ駅までは地下鉄で約10分。特にトラブルもなく無事ウィーン・マイドリング駅(Wien Meidling)に到着しました。

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まだ朝早いせいか人の姿はまばらです。日曜日なので売店も開いていません。昨日の夜に朝食用のパンを買っておいてよかったです。

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ホームに上がるべく地下コンコースを歩きます。右手には切符の自動券売機があります。クレジットカードも紙幣も使えますが。7日間乗り放題の一等車用ユーレイル・オーストリアパスを持っているので切符不要です。

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ホームに上がりました。やっと空が明るくなっています。


さて、ここでオーストリアの列車について少々説明をしましょう。
オーストリア国鉄(略称ÖBB)のすべての列車にはそれぞれ異なる列車番号がふられています。
そして数字の前にあるÖECとは列車の種別を表しています。

・RJ(railjet):レイルジェット
オーストリア国鉄が誇る高速特急。ミュンヘン〜ウィーン〜ブダペスト、チューリヒ〜ウィーン間などで運行され、最高時速200キロでかっ飛ばします。

・EuroCity(ユーロシティ・EC)/ÖBB-EuroCity(ÖBBユーロシティ・ÖEC)
ユーロシティ、ドイツ語でオイロシティは、その名の通りオーストリアからヨーロッパ各国の都市に向かう国際特急列車。
ÖBBを冠するECはリニューアル客車主体の運行で、一部国内のみの運行もあります。

・InterCity(インターシティ・IC)/ÖBB-InterCity(ÖBBインターシティ・ÖIC)
こちらはオーストリア国内各地を結ぶ特急列車です。ECとICは同格です。

・InterCityExpress(インターシティエクスプレス・ICE)
ドイツから乗り入れてくる高速特急列車です。

・EuroNight(ユーロナイト・EN)
ローマやワルシャワなどに向かう国際夜行特急列車です。

・Schnellzug(D)
急行列車。1990年代までは数多く走っていましたが、2011年9月現在ではほとんどなくなってしまいました。ところが2011年12月のダイヤ改正では主としてローカル線の特急に代わり運行されるようになってきています。


・RegionalExpress(REX)
快速列車です。

・Regionalzug(R)
普通列車です。

・S-Bahn(Sバーン)
大都市近郊を走る近郊列車です。

特急列車は一部を除き任意指定制で、指定席券を買わなくても乗れます。
ユーレイル・オーストリアパスを利用して座席指定を行う場合は別途座席指定料金がかかります。
快速列車以下は全席自由なので座席指定はできません。

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私が乗る6:29発、ÖEC731列車は6番線からの出発。今は6時15分ですが、まだ入線していないようです。
しばらく待っていたら貨物列車が轟音を立てて通過していきました。

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6時20分。ÖEC731特急列車が入線してきました。電気機関車に引かれた客車列車です。

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私のユーレイル・オーストリアパスは一等車用なので、一等車に乗り込みます。
2列×1列のゆったりとした革張りの椅子で、各座席にはごみ箱と電源コンセントがあります。

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日本と違い指定席と自由席で車両が分かれているわけではありません。各座席の上にこうしたプレートがあり、座席が指定されている場合はその区間が書かれた紙片が挟み込まれることになっています。
つまり座席指定をしていない客は、紙片が刺さっていない席を探せばいいわけです。
もっとも私が乗った車両はガラガラで、私を入れて2人しか乗っていません。

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この列車はウィーン南部のフィラッハという都市まで4時間かけて走ります。HBFはハウプトバーンホフといい、ハウプトは中央、バーンホフは駅。中央駅のドイツ語略称です。

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各座席にはこんなものも置いてありました。

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開くと各駅の到着時間と乗り換え列車の案内、車内のサービスが書かれています。
結構ぎりぎりの接続の列車も書かれていますから、オーストリアの列車はおおむね正確なのでしょう。
もっとも2分遅れで平謝りの日本とは違い、ヨーロッパでは5分や10分の遅れは遅れとみなしませんから、まあその程度の正確性です。

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6:29、フィラッハ行特急列車は定刻にウィーン・マイドリング駅(Wien Meidling)を出発しました。
ユーレイル・オーストリアパスに今日の日付を書き込んで、ぼんやりと日の出を眺めていると車掌が検札にやってきました。
ヨーロッパの鉄道では改札口がないかわりに、車掌が頻繁にやってきて切符をチェックすることが多いです。

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列車がしばらくウィーン郊外を走りますが、30分ほど走りWiener Neustabt Hbfを過ぎると山がちになります。

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7時を過ぎたあたりでグロッグニッツ駅を通過。いよいよ世界遺産のセメリンク鉄道に入ります。この特急列車はセメリンク鉄道内を全駅通過してしまい、アルプスを越えた後のBruck a. d. Mur駅まで止まりません。
はっきりと上り坂になり、カーブが多くなりました。
列車は何度も美しいアーチ橋を通過します。カーブしているのでなんとか見えます。

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眼下には朝の山村が見えます。

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景色を見ていると食堂車のウェイターが「何か飲みますか?」と聞きに来ました。
私は「紅茶をください」と言ったつもりですが、なぜか「グリーンティ?」と聞き直されたので、緑茶があるならそれでもいいやと緑茶を注文。
一等車は飲み物サービスとどこかで聞いたような気がしましたが、緑茶を持ってきたウェイターに2.6ユーロと言われました。うーん有料でしたか。
まあ寒いからいいです。あったかいティーバックの緑茶をすすりながら、景色を眺めます。
そういえば食堂車があるなら朝食用にパンを買う必要はありませんでしたね。乗る前に気づけばよかったです。

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列車はぐいぐいと高度を上げていきます。何度目かのアーチ橋を通過しました。

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晩秋の山々がきれいです。

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できれば外からアーチ橋を走っている列車を撮影したいものですね。1日がかりになりそうですが、さぞかしいい写真が撮れるでしょう。

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列車は速度を落とし駅を通過します。

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ふと反対側を見たらセメリンク駅にあるセメリンク駅には鉄道の設計者、カール・フォン・ゲガの記念碑と、世界遺産であることを示すプレートがありました。

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列車は下りに差し掛かります。しかし長いトンネルを抜けたら周囲は霧に覆われていました。これでは何も見えません。

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8:15。列車はほぼ定刻に2つ目の停車駅であるBruck a. d. Mur駅に到着。霧に包まれた小さい駅ですが、グラーツ方面とクラーゲンフルト、フィラッハ方面に分岐する交通の要衝です。
もうじき乗換駅です。降りる支度をしましょう。

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8:25、ガラガラの特急列車は定刻通りレオベン中央駅(Leoben Hbf)に到着。ここで2本目の列車に乗り換えます。
次に乗る列車は8:31発のIC512列車、ザルツブルク行の特急列車です。
オーストリア南部の大都市グラーツとザルツブルクを結ぶ重要な路線ですが、実際は特急と普通列車がそれぞれ2時間間隔で交互に走るローカル線です。
接続時間がわずか6分しかなく、この列車を逃すとハルシュタット到着が2時間遅くなるので遅れないかヒヤヒヤしていたのですが、お互い定時に運転しているようで一安心です。
この後はさらに途中のシュタイナッハ−イルドニング駅(Stainach-Irdning)でハルシュタット方面への列車に乗り換えることになっています。

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さっきまで乗ってきたECも今乗っているICも形の上では同格のはずですが、ローカル線を行く特急だからなのかだいぶ車内設備が劣ります。
一等車がないので二等車に乗ったら座席はリクライニングできず、まるで普通列車です。でも窓が開くのはいいですね。写真撮るには好都合です。

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8:31定刻通り出発。すぐに検札がやってきました。車内は4割近い席が埋まっています。列車はのどかな景色の中を走ります。

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車内販売がやってきました。腐っても特急です。

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古城でしょうか。山肌に城壁が見えます。

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うれしいことに霧が晴れてきました。青い空と緑の芝生、きれいな家々。まさにアルプスの景色ですね。

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9:36、ザルツブルク行IC512特急列車は定刻通りシュタイナッハ−イルドニング駅(Stainach-Irdning)に到着。
ここからハルシュタットに向かう列車に乗り換えます。

ここシュタイナッハ・イルドイングからハルシュタットを通ってアットナング・プッハイム(Attnang-Puchheim)に向かう路線はオーストリアでも指折りの景色がいい路線なんだとか。
楽しみです。


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