イタリア・スイス旅行記の第43回です。
10日目はミラノからベルニナ線を経由してアルプスを越え、チューリッヒを目指します。
すべての鉄道ファン憧れのベルニナ線に乗る機会がやってきました。
まずはイタリアとの国境の町ルガーノを発車し、ポスキアーヴォ湖を目指します。
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■ 10日目 2012年5月7日 月曜日
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8:50過ぎにスイスとの国境の町ティラーノに到着しました。
いよいよこの旅行の最後の見どころ、ベルニナ線です。
ベルニナ線はスイス中部の高山地帯に路線を持つレーティッシュ鉄道が運行しており、ティラーノとスイスを代表する観光地であるサンモリッツを結んでいます。
ベルニナ線はサンモリッツとスイス中部の都市クールを結ぶアルブラ線とともに車窓が美しいことで知られ、世界遺産にも指定されています。今日はベルニナ線とアルブラ線に乗り、その後チューリッヒに向かうことになっています。
旧イタリア国鉄トレニタリアのティラーノ駅を出ると、すぐ左側にスイス・レーティッシュ鉄道のティラーノ駅がありました。この駅に入ってしまえばもうスイスです。かつては出入国審査が行われていたそうですが、今は両国がシェンゲン条約に加盟しているためフリーパスです。
駅舎に入ると「ティラノ」と日本語で書かれた立派な駅名表がありました。なぜこんなものがここに?
それは、日本の箱根登山鉄道とレーティッシュ鉄道が姉妹鉄道の協定を結んでいるからです。むかし箱根登山鉄道を建設する際にこのレーティッシュ鉄道を視察して参考にしたことが縁になったそうです。現在箱根登山鉄道ではベルニナ号と名付けられた電車が走り、ベルニナ線のPR広告も掲示されています。
そしてティラーノ駅には箱根登山鉄道のポスターが掲示されていました。景色のスケールではベルニナ線にかなわないものの、温泉や山々を含めれば箱根も負けていません。
今度の列車は9:40発。まだ時間は充分にあります。
チューリッヒまでの切符はすでにインターネットで購入済み。運賃は1等車で145スイスフラン。日本円にして約13000円でした。自宅のプリンターでEチケットを印刷して、それを車掌に見せればOKです。
ただ、切符以外に聞きたいことがあり、がらんとした切符売場に行ってみました。
実は、スイスの鉄道にはスーツケースなどの大きな荷物を目的地まで別送してくれるサービスがあります。有料ですが、途中の観光地で途中下車する場合でも手ぶらで観光できてとても便利なのです。
ただ、これから乗るベルニナ線はスイス国鉄ではありませんし、目的地のチューリッヒまで距離がありますから、今日中に荷物を送ってもらえるかどうかわかりません。
そこで、私は出発前にティラーノ駅にメールして荷物を運んでもらえるか聞いてみました。数日後なぜか別のポスキアーヴォ駅から回答があり、チューリッヒ駅は当日発送できないが、途中のサンモリッツ駅かクール駅なら当日届けられるとのこと。サンモリッツ駅出発後からチューリッヒまでは下車観光しませんからちょうどいいです。私はサンモリッツ駅で荷物を受け取ることにしました。
「すみません。スーツケースをサンモリッツ駅まで運んでほしいのですが、ここでいいですか?」
「はい。ここですよ。それではこの書類に氏名などの必要事項を記入してください」
「お値段はいくらですか?」
「12スイスフランです」
「サンモリッツ駅での受け取りは何時からになりますか?」
「次の次の10:50発の列車で運びますから、サンモリッツ駅での受け取りは12時以降になります」
手続きはとても簡単でした。約1000円しますが、スーツケースを持って右往左往しなくてよいのですから安いものです。
送料をカードで払って預かり証をもらい、時間があるのでトイレへ。イタリアのトイレは有料ならそこそこきれいですが、無料の場合は汚いか便座がないか、あるいはその両方なのです。しかしスイスの駅のトイレはとてもきれいで、便座もありました。スイスに入ったという実感がわいてきます。
しばらく街をぶらついてベルニナ線のホームへ。4両編成の赤い電車の後ろに木材を乗せる貨物車がつながっています。
列車は急カーブを曲がるため短めの車体になっています。
行先表示。途中経由地を表示しています。
駅の引き込み線には木材を満載した貨物列車が止まっていました。
先頭車両は新しい車両です。新しい車両は窓が開かないという話も聞きましたが、ちゃんと窓が開くので一安心です。
車内に乗り込みました。こちらは2等車。2列×2列の向い合せです。
私が乗るのは一等車です。先頭車両は後ろ半分が2等、前半分が1等になっていました。
わざわざ高い金を払って1等車にした理由は空いていることと、前面展望です。
しかも1等車の客は私一人!左右に移り放題です。私は左右の窓を全開にして、写真撮影の準備を万端に整えました。
テーブルにはレーティッシュ鉄道の路線図。今どこにいるのかわかってありがたいサービスです。
運転台です。とりあえずブラインドを上げてほしいです。
3分遅れの9:43にティラーノ駅を発車。これからアルプスに向かってどんどん登っていきます。
列車は教会を左手に見ながら大きくカーブしていきます。
出発後は正面のブラインドを上げてくれたので、前面展望もばっちりです。
ティラーノ駅を出発した電車はしばらく道路上の併用軌道を走ります。路面電車は無くて4両編成の電車がこんなところを走っているのですよ。路上から写真を撮ったら鉄道ファン的にさぞかしいい写真になることでしょう。残念ながらここで一本列車を見送ると日暮れまでにチューリッヒに到着できない恐れがあるのでやめておきました。
夏場なら1時間に1本の高頻度で運転されるベルニナ線も、今はシーズンオフの冬期間で本数が減っています。パノラマ車両で運行され、停車駅が少ない観光列車のベルニナ急行も5月下旬までほとんど運休です。ただし、ベルニナ急行のパノラマ車両は窓が開きませんから、写真を撮りたいのであれば窓が開く普通列車の方がよさそうです。
道路を外れて普通の線路になりました。川沿いの曲がりくねった線路を登っていきます。
最初の駅に到着しました。Campocologno駅です。この辺りはスイスと言ってもこの辺りはイタリア語圏。地名もイタリア語です。
駅を発車。列車は右に左に急カーブしながら進みます。踏切への進入の仕方がすごいですね。遮断機と直角です。
踏切を通り過ぎます。
側と道路に沿って進みます。
しばらく進むとベルニナ線最初の見どころが見えてきました。ブルージオのオープンループ橋です。
ブルージオのオープンループ橋は360度回転しながら坂を登って高度を稼ぐ世界的にも珍しいループ橋です。
このように高架橋がぐるりと1回転しています。列車はこの高架橋をくぐってループ橋に入ります。
さあぐるっと回りながら坂を登っていきます。
ループ橋の中心にはなにやらモニュメントがあります。
高架橋を登っていきます。かなり高度を稼ぎました。
眼下に先ほど通った線路が見えています。電車が360度ぐるっと回ったのです。
線路が見事な円形を描いています。
このループ橋。外側から電車が走る姿を撮影すればさぞかし絵になる写真ができあがるのでしょう。ですが先述の通り冬期間の今日は本数が少なく、スケジュールの都合で撮影をあきらめざるを得ませんでした。ああもったいない。
オープンループ橋を抜けました。
アルプスの白い山々が見えてきました。この電車で、あの山を登るのです。
10:01、ブルージオ駅に到着。先ほどの360度ループ橋はこの駅から坂道を下って徒歩10分です。この駅で下り電車とすれ違いました。
ブルージオ駅を出発すると、すぐに180度カーブします。先ほど出発したばかりの駅舎が見えました。
背後に小さな教会を従えたかわいらしい駅です。
先ほどすれ違った電車が山を下っていきます。
電車はアルプスの山に向かってどんどん登ります。
これぞアルプス。いい景色です。でもこの先もっといい景色が待っています。
突然目の前に湖が広がりました。
これがポスキアーヴォ湖。美しい湖です。
列車は湖畔をのんびりと進みます。
白い山々が湖面に映っています。今日は天気が良くて本当によかったです。吹雪だったら何も見えませんし。
広い湖にただ一艘、ボート遊びを楽しむ老夫婦。この瞬間、湖は2人のものです。
10:12、Le Prese駅に到着。再び併用軌道になりました。
次回もベルニナ線。さらに素晴らしい景色になります。
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8:50過ぎにスイスとの国境の町ティラーノに到着しました。
いよいよこの旅行の最後の見どころ、ベルニナ線です。
ベルニナ線はスイス中部の高山地帯に路線を持つレーティッシュ鉄道が運行しており、ティラーノとスイスを代表する観光地であるサンモリッツを結んでいます。
ベルニナ線はサンモリッツとスイス中部の都市クールを結ぶアルブラ線とともに車窓が美しいことで知られ、世界遺産にも指定されています。今日はベルニナ線とアルブラ線に乗り、その後チューリッヒに向かうことになっています。
旧イタリア国鉄トレニタリアのティラーノ駅を出ると、すぐ左側にスイス・レーティッシュ鉄道のティラーノ駅がありました。この駅に入ってしまえばもうスイスです。かつては出入国審査が行われていたそうですが、今は両国がシェンゲン条約に加盟しているためフリーパスです。
駅舎に入ると「ティラノ」と日本語で書かれた立派な駅名表がありました。なぜこんなものがここに?
それは、日本の箱根登山鉄道とレーティッシュ鉄道が姉妹鉄道の協定を結んでいるからです。むかし箱根登山鉄道を建設する際にこのレーティッシュ鉄道を視察して参考にしたことが縁になったそうです。現在箱根登山鉄道ではベルニナ号と名付けられた電車が走り、ベルニナ線のPR広告も掲示されています。
そしてティラーノ駅には箱根登山鉄道のポスターが掲示されていました。景色のスケールではベルニナ線にかなわないものの、温泉や山々を含めれば箱根も負けていません。
今度の列車は9:40発。まだ時間は充分にあります。
チューリッヒまでの切符はすでにインターネットで購入済み。運賃は1等車で145スイスフラン。日本円にして約13000円でした。自宅のプリンターでEチケットを印刷して、それを車掌に見せればOKです。
ただ、切符以外に聞きたいことがあり、がらんとした切符売場に行ってみました。
実は、スイスの鉄道にはスーツケースなどの大きな荷物を目的地まで別送してくれるサービスがあります。有料ですが、途中の観光地で途中下車する場合でも手ぶらで観光できてとても便利なのです。
ただ、これから乗るベルニナ線はスイス国鉄ではありませんし、目的地のチューリッヒまで距離がありますから、今日中に荷物を送ってもらえるかどうかわかりません。
そこで、私は出発前にティラーノ駅にメールして荷物を運んでもらえるか聞いてみました。数日後なぜか別のポスキアーヴォ駅から回答があり、チューリッヒ駅は当日発送できないが、途中のサンモリッツ駅かクール駅なら当日届けられるとのこと。サンモリッツ駅出発後からチューリッヒまでは下車観光しませんからちょうどいいです。私はサンモリッツ駅で荷物を受け取ることにしました。
「すみません。スーツケースをサンモリッツ駅まで運んでほしいのですが、ここでいいですか?」
「はい。ここですよ。それではこの書類に氏名などの必要事項を記入してください」
「お値段はいくらですか?」
「12スイスフランです」
「サンモリッツ駅での受け取りは何時からになりますか?」
「次の次の10:50発の列車で運びますから、サンモリッツ駅での受け取りは12時以降になります」
手続きはとても簡単でした。約1000円しますが、スーツケースを持って右往左往しなくてよいのですから安いものです。
送料をカードで払って預かり証をもらい、時間があるのでトイレへ。イタリアのトイレは有料ならそこそこきれいですが、無料の場合は汚いか便座がないか、あるいはその両方なのです。しかしスイスの駅のトイレはとてもきれいで、便座もありました。スイスに入ったという実感がわいてきます。
しばらく街をぶらついてベルニナ線のホームへ。4両編成の赤い電車の後ろに木材を乗せる貨物車がつながっています。
列車は急カーブを曲がるため短めの車体になっています。
行先表示。途中経由地を表示しています。
駅の引き込み線には木材を満載した貨物列車が止まっていました。
先頭車両は新しい車両です。新しい車両は窓が開かないという話も聞きましたが、ちゃんと窓が開くので一安心です。
車内に乗り込みました。こちらは2等車。2列×2列の向い合せです。
私が乗るのは一等車です。先頭車両は後ろ半分が2等、前半分が1等になっていました。
わざわざ高い金を払って1等車にした理由は空いていることと、前面展望です。
しかも1等車の客は私一人!左右に移り放題です。私は左右の窓を全開にして、写真撮影の準備を万端に整えました。
テーブルにはレーティッシュ鉄道の路線図。今どこにいるのかわかってありがたいサービスです。
運転台です。とりあえずブラインドを上げてほしいです。
3分遅れの9:43にティラーノ駅を発車。これからアルプスに向かってどんどん登っていきます。
列車は教会を左手に見ながら大きくカーブしていきます。
出発後は正面のブラインドを上げてくれたので、前面展望もばっちりです。
ティラーノ駅を出発した電車はしばらく道路上の併用軌道を走ります。路面電車は無くて4両編成の電車がこんなところを走っているのですよ。路上から写真を撮ったら鉄道ファン的にさぞかしいい写真になることでしょう。残念ながらここで一本列車を見送ると日暮れまでにチューリッヒに到着できない恐れがあるのでやめておきました。
夏場なら1時間に1本の高頻度で運転されるベルニナ線も、今はシーズンオフの冬期間で本数が減っています。パノラマ車両で運行され、停車駅が少ない観光列車のベルニナ急行も5月下旬までほとんど運休です。ただし、ベルニナ急行のパノラマ車両は窓が開きませんから、写真を撮りたいのであれば窓が開く普通列車の方がよさそうです。
道路を外れて普通の線路になりました。川沿いの曲がりくねった線路を登っていきます。
最初の駅に到着しました。Campocologno駅です。この辺りはスイスと言ってもこの辺りはイタリア語圏。地名もイタリア語です。
駅を発車。列車は右に左に急カーブしながら進みます。踏切への進入の仕方がすごいですね。遮断機と直角です。
踏切を通り過ぎます。
側と道路に沿って進みます。
しばらく進むとベルニナ線最初の見どころが見えてきました。ブルージオのオープンループ橋です。
ブルージオのオープンループ橋は360度回転しながら坂を登って高度を稼ぐ世界的にも珍しいループ橋です。
このように高架橋がぐるりと1回転しています。列車はこの高架橋をくぐってループ橋に入ります。
さあぐるっと回りながら坂を登っていきます。
ループ橋の中心にはなにやらモニュメントがあります。
高架橋を登っていきます。かなり高度を稼ぎました。
眼下に先ほど通った線路が見えています。電車が360度ぐるっと回ったのです。
線路が見事な円形を描いています。
このループ橋。外側から電車が走る姿を撮影すればさぞかし絵になる写真ができあがるのでしょう。ですが先述の通り冬期間の今日は本数が少なく、スケジュールの都合で撮影をあきらめざるを得ませんでした。ああもったいない。
オープンループ橋を抜けました。
アルプスの白い山々が見えてきました。この電車で、あの山を登るのです。
10:01、ブルージオ駅に到着。先ほどの360度ループ橋はこの駅から坂道を下って徒歩10分です。この駅で下り電車とすれ違いました。
ブルージオ駅を出発すると、すぐに180度カーブします。先ほど出発したばかりの駅舎が見えました。
背後に小さな教会を従えたかわいらしい駅です。
先ほどすれ違った電車が山を下っていきます。
電車はアルプスの山に向かってどんどん登ります。
これぞアルプス。いい景色です。でもこの先もっといい景色が待っています。
突然目の前に湖が広がりました。
これがポスキアーヴォ湖。美しい湖です。
列車は湖畔をのんびりと進みます。
白い山々が湖面に映っています。今日は天気が良くて本当によかったです。吹雪だったら何も見えませんし。
広い湖にただ一艘、ボート遊びを楽しむ老夫婦。この瞬間、湖は2人のものです。
10:12、Le Prese駅に到着。再び併用軌道になりました。
次回もベルニナ線。さらに素晴らしい景色になります。
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この鉄道だったのですか。