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Numberにパ・リーグの観客が増加していると言う記事がありました。

パ・リーグの成長。〜10年間で約150万人の観客増〜


記事では2005年と2014年の観客動員数を比較した結果、1試合平均の観客数は3483人も増えたとかかれています。パ・リーグの地域密着型経営の成果が出ているということです。
札幌の北海道日本ハムファイターズや、福岡のソフトバンクホークスについては今更取り上げる必要も無いでしょう。それぞれの地で磐石と言っていい地盤を固めています。
楽天イーグルスも徐々に仙台に浸透し、昨年は日本一と席を増築した効果もあって大きくファンを増やしました。

これら3球団は地方の球団であり、地域密着が成功しやすい環境にあります。
私が注目したのはそれ以外の2球団、西武とオリックスです。実はパ・リーグにもう1球団あるのですが、とりあえずそのことは置いておきます。

オリックスは今や関西で唯一のパ・リーグの球団ですが、合併問題の後遺症や、チーム自体が弱かったこともあり観客数が低迷していました。しかし熱心なファンサービスの甲斐もあり2010年以降は増加傾向にあるようです。そして2014年はチームの快進撃とともに観客数も大幅増。前年比18.4%も増やしました。
チームが強ければ客は来ます。それに魅力ある選手も増えました。後はなんでしょう。阪神ファンからの流入組がいるのではないかと思います。2005年以降のマリーンズがまさにそれで、交流戦や日本シリーズでロッテに興味を持った阪神ファンが2005年あたりから大阪ドームや神戸のレフトスタンドに大挙して押し寄せたのです。彼らはマリーンズの応援もしていましたが、一番大きな声援は他球場の試合経過で阪神が勝っていると伝えられた時でした。
今年に関しては阪神の和田監督の采配に反発するファンが多いと聞いていますので、その影響がありそうですね。またロッテをきっかけにパリーグに興味を持った阪神ファンが、地元のオリックスに目を向けて、オリックスファンに転向したということもあるかもしれません。
これもまた地域密着。大阪圏でファン拡大に取り組んだ成果が出ているのでしょう。

そして西武。経営面でのゴタゴタが続き、主力選手の流出が相次いでいるにも拘らず、2005年に比べ観客数は増えています。
西武は2007年に観客動員数パ・リーグ最下位という屈辱をバネにファンサービスを改革。ファンの量より質を重視する戦略でリピーターを増やし、観客数の増加につなげています。
西武のファンサービスについてはこの記事が詳しいです。


西武ライオンズのマーケティング改革:なぜファンは西武ドームに何度も詰めかけるのか (ITMEDIA)

記事中にはこうあります。

西武ライオンズは、かつて“ファン離れ”に対して強烈な危機意識を持っていた。2007年に観客動員数で12球団最下位となり、球団の経営改革に向けて外部から新たな人材を登用するほか、CRM(顧客情報管理)システムを導入するなどして、マーケティング施策の強化を図った。その結果、観客動員数はV字回復。2011年には球団単体で黒字化し、2013年3月期決算では、営業利益が過去最高の約6億5000万円だった。この改革の旗振り役の一人となった佐々木将之事業部長は、「ファンクラブ会員の組織化が起点になった」と話す。

 どの球団においても観客動員数を増やすことで売り上げを伸ばすというのは基本中の基本。しかし、そのための戦略はさまざまだ。西武ライオンズの本拠地である西武ドームがあるのは埼玉県所沢市で、その立地環境から他球団と比べて人口のポテンシャルは高くない。来場者の多くは西武線沿線に住む埼玉、東京の人たちである。「広く浅く、“一見さん”を集客するビジネスモデルは厳しい。ロイヤルカスタマーを作り、リピーターを増やす戦略しかないと考えた」と佐々木氏は振り返る。

(中略)

西武ライオンズのCRMシステムは、元々、全日本空輸(ANA)のマイレージシステムをベースに千葉ロッテマリーンズが開発したものを、西武ライオンズ仕様にカスタマイズしたシステムだ。ファンクラブ会員ごとのデータベースがあり、チケットやグッズの購入履歴やお気に入り選手といったデータを管理できる。そうしたデータを基にメールマガジンでキャンペーンを打ったり、西武ドームの試合と併せたイベントを企画したりすることで、購買や来場の促進につなげる。

 加えて、過去数年間の来場者傾向などのデータを分析し、この期間だとどのくらいのファンが来るというのが予測できるので、そこに合わせて大型なキャンペーンを展開する。データやノウハウは蓄積されていくので、予測の精度は毎年上がっているそうだ。



そうなんです。西武ライオンズが取り入れたCRMという手法は、もともと千葉ロッテが取り入れた手法だったのです。
2005年から2008年ごろまでのマリーンズはファンサービスにおいても評価が高かったのですが、実はそのころロッテにいた職員が西武に移り、ファンサービス向上に取り組んだ結果が今の現状だと聞いています。

で、西武が躍進する一方で、我らがマリーンズはパリーグで唯一2005年から客を減らした球団となっています。
しかしそれは比較の対象が悪い。2005年はロッテが優勝した年ですよ。客が多くて当たり前です。
もっと長いスパンで比べてくれ!と言いたいところですが、それは困難です。なぜなら2004年までの観客数は水増しがひどく参考にならないからです。でもやっぱり悔しいので比べます。1985年から2014年までの年間観客動員数を調べました。その上で千葉ロッテマリーンズのファンサービスの現状などを考えてみたいと思います。長文です。

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球団名 南海(〜1988)
福岡ダイエー
西武 日本ハム 阪急(〜1988)
オリックス
ロッテ 近鉄
  観客数 前年比 観客数 前年比 観客数 前年比 観客数 前年比 観客数 前年比 観客数 前年比
1985 553,000   1,409,000   914,000   648,000   638,500   565,000  
1986 603,000 9.04 1,662,000 17.96 1,193,000 30.53 1,145,000 76.70 692,700 8.49 1,028,000 81.95
1987 883,000 46.43 1,808,000 8.78 1,242,000 4.11 1,230,000 7.42 778,000 12.31 1,006,000 ▲ 2.14
1988 918,000 3.96 1,892,000 4.65 2,458,500 97.95 1,100,000 ▲ 10.57 816,000 4.88 1,087,000 8.05
1989 1,251,000 36.27 1,945,000 2.80 2,385,000 ▲ 2.99 1,040,000 ▲ 5.45 841,000 3.06 1,306,000 20.15
1990 1,346,000 7.59 1,913,000 ▲ 1.65 2,274,000 ▲ 4.65 1,052,000 1.15 786,000 ▲ 6.54 1,238,000 ▲ 5.21
1991 1,573,000 16.86 1,981,000 3.55 2,250,000 ▲ 1.06 1,230,000 16.92 1,021,000 29.90 1,419,000 14.62
1992 1,677,000 6.61 1,907,000 ▲ 3.74 2,112,000 ▲ 6.13 1,241,000 0.89 1,305,000 27.82 1,280,000 ▲ 9.80
1993 2,462,000 46.81 1,624,000 ▲ 14.84 2,021,000 ▲ 4.31 1,186,000 ▲ 4.43 930,000 ▲ 28.74 1,068,000 ▲ 16.56
1994 2,525,000 2.56 1,688,000 3.94 1,721,000 ▲ 14.84 1,407,000 18.63 1,086,000 16.77 1,133,000 6.09
1995 2,493,000 ▲ 1.27 1,661,000 ▲ 1.60 1,597,000 ▲ 7.21 1,658,000 17.84 1,270,000 16.94 967,000 ▲ 14.65
1996 2,207,000 ▲ 11.47 1,295,000 ▲ 22.03 1,600,000 0.19 1,796,000 8.32 1,064,000 ▲ 16.22 967,000 0.00
1997 2,307,000 4.53 1,447,500 11.78 1,678,000 4.88 1,712,000 ▲ 4.68 1,002,000 ▲ 5.83 1,866,000 92.97
1998 2,163,000 ▲ 6.24 1,384,500 ▲ 4.35 1,572,000 ▲ 6.32 1,345,000 ▲ 21.44 946,000 ▲ 5.59 1,250,000 ▲ 33.01
1999 2,390,000 10.49 1,834,000 32.47 1,416,000 ▲ 9.92 1,206,000 ▲ 10.33 1,070,000 13.11 1,155,000 ▲ 7.60
2000 2,786,000 16.57 1,743,500 ▲ 4.93 1,475,000 4.17 1,223,000 1.41 1,192,000 11.40 1,148,000 ▲ 0.61
2001 3,087,000 10.80 1,694,000 ▲ 2.84 1,376,000 ▲ 6.71 1,073,000 ▲ 12.26 1,301,000 9.14 1,593,000 38.76
2002 3,108,000 0.68 1,682,000 ▲ 0.71 1,260,000 ▲ 8.43 1,099,000 2.42 1,210,000 ▲ 6.99 1,350,000 ▲ 15.25
2003 3,228,000 3.86 1,664,000 ▲ 1.07 1,319,000 4.68 1,275,000 16.01 1,225,000 1.24 1,433,000 6.15
2004 3,070,000 ▲ 4.89 1,649,000 ▲ 0.90 1,616,000 22.52 1,415,000 10.98 1,596,000 30.29 1,338,000 ▲ 6.63


球団名 ソフトバンク 埼玉西武  北海道日本ハム オリックス 千葉ロッテ 東北楽天
  観客数 前年比 観客数 前年比 観客数 前年比 観客数 前年比 観客数 前年比 観客数 前年比
2005 2,165,445 ▲ 29.46 1,061,115 ▲ 35.65 1,368,748 ▲ 15.30 1,356,088 ▲ 4.16 1,334,014 ▲ 16.42 977,104
2006 2,037,556 ▲ 5.91 1,196,574 12.77 1,600,854 16.96 1,390,231 2.52 1,349,656 1.17 951,723 ▲ 2.60
2007 2,307,160 13.23 1,093,471 ▲ 8.62 1,833,054 14.50 1,137,186 ▲ 18.20 1,558,430 15.47 1,117,369 17.40
2008 2,250,044 ▲ 2.48 1,413,583 29.27 1,873,931 2.23 1,266,765 11.39 1,601,632 2.77 1,149,061 2.84
2009 2,245,969 ▲ 0.18 1,515,045 7.18 1,992,172 6.31 1,285,907 1.51 1,465,189 ▲ 8.52 1,203,169 4.71
2010 2,164,430 ▲ 3.63 1,591,303 5.03 1,945,944 ▲ 2.32 1,443,559 12.26 1,546,105 5.52 1,141,640 ▲ 5.11
2011 2,293,899 5.98 1,591,651 0.02 1,990,338 2.28 1,400,961 ▲ 2.95 1,332,815 ▲ 13.80 1,168,188 2.33
2012 2,447,501 6.70 1,526,028 ▲ 4.12 1,858,524 ▲ 6.62 1,330,676 ▲ 5.02 1,239,168 ▲ 7.03 1,177,793 0.82
2013 2,408,993 ▲ 1.57 1,600,841 4.90 1,855,655 ▲ 0.15 1,438,467 8.10 1,260,439 1.72 1,281,087 8.77
2014 2,468,442 2.47 1,498,365 ▲ 6.40 1,897,789 2.27 1,703,734 18.44 1,223,915 ▲ 2.90 1,450,233 13.20



こちらが観客動員数の30年分の推移です。
参考にならないと言いつつなぜこの表を出したか。
それは1985年と比べていただきたいからです。とにかく客が少ない。100万人を超えているの西武だけ。後楽園球場(東京ドームではありません)を本拠とする日ハムがかろうじて91万人で、他の近鉄、南海、ロッテ、阪急は50〜60万人という惨状。おそらく実際はもっと少なかったでしょう。観客数3桁という試合も珍しくありませんでしたから。

つまり、30年前と比べればロッテも大幅に客を増やしたわけです。
もちろん他のパリーグの球団も同様です。地域密着以外にも、多チャンネル化によりローカル局で試合中継が始まったことや、インターネットによる中継開始による間口の拡大。ネット上におけるファンコミュニティの形成。松坂やダルビッシュ、中田、田中、大谷などパ・リーグにスター選手が集まったことによる野球の質の向上。なによりも、戦力が均衡したことにより、パリーグのどの球団にも優勝する可能性があることが大きいでしょう。


さて、ロッテです。ロッテは80年代から低迷を続け、不人気弱小球団の代名詞という体たらくでした。その後1995年のバレンタイン監督就任により球団のイメージが大幅に向上し客を増やすも、翌年は江尻リモコン内閣により低迷。1998年には近藤監督の下で悪夢の18連敗を喫しました。
ところが連敗しているのになぜかファンが増えていきます。おまけにどんなに負け続けても応援するファンの姿が注目されると、さらにまたファンが増えていったのです。聞いた話ではロッテが負け続けた間にファンクラブ会員数が2万人から3万人になったとのこと。なんと1万人も増えたそうです。

私が熱心に応援しだしたのもちょうどこのころ。「こんな弱いチームを俺が応援しなくてどうする!」と、妙な使命感に駆られて球場に通ったものです。
1998年は決して弱すぎたわけではありません。最終的には首位から9.5ゲーム差の最下位。チーム打率リーグ1位、チーム防御率リーグ2位と言う成績でシーズンを終えました。18連敗したわりにはゲーム差が開いていませんし、選手の成績も良いのです。巡り会わせが悪かったとしか言いようがありません。前年まで抑えの両輪だった成本と河本が離脱していたのも不運でしたね。黒木を抑えに回すのではなく、この年の7月に獲得したクローザーのウォーレンをもっと早く獲得できていれば違った結果になったことでしょう。

18連敗で注目を浴びたマリーンズ。よくよくチームを見てみれば、知名度はなくとも良い選手が選手がたくさんいました。ピッチャーでは魂のエースジョニー黒木、精密機械小宮山、この年だけは良かった武藤、ヴェテラン園川。
野手では本物のメジャーリーガーフリオ・フランコ、前年は試合をサボって卓球に熱中するもフランコの加入で心を入れ替えたキャリオン、ガッツあふれるプレーと弱肩が持ち味の諸積、守備の達人小坂、地元習志野が生んだ安打製造機福浦、ファンタジスタ初芝神、太平洋一の右打ちの達人堀幸一、パンチ力と人気だけはある立川、イワイワオーのコールが楽しい大村巌、とっても地味な往年の首位打者平井、右の代打の切り札佐藤幸彦、タイガーウッズにそっくりな松本、メジャー級の守備タダハル・サカイ・・・。地味ながら多士済々名面々が、不思議な魅力を放っていたのです。

今のような応援が確立されたのもこのころ。1999年から5年に及ぶ山本功児政権も相変わらず良かったのですが、徐々にファンが増え続け、少なくともライトスタンドだけはそこそこ埋まるようになりました。応援する楽しさ、ロッテというチームの魅力がじわじわとひろがっていったのです。ただ、球団として積極的なファンサービスを行っていたわけではなく、熱心なファンによる布教活動の成果と言っていいでしょう。

転機となったのは2004年。再びバレンタイン監督が就任してファンの期待が高まるも、球団合併問題が勃発した年です。
あの時は「マリーンズとホークスが合併して福岡移転」という話がほぼ決まったかのように報じられましたから、もう千葉でロッテが見られるのは最後になるかもしれないと思い球場に足を運びました。

明けて2005年。パリーグの各球団は球団合併騒動を教訓とし、収益向上とそのためのファンサービス改善に本腰を入れ始めました。そしてチーム消滅の危機を乗り越えたマリーンズは快進撃。プレーオフの激闘を制し、見事パリーグ優勝、日本一、アジア一を成し遂げました。
これは感動しましたね。ファンをやっていて良かったと心から思いました。
マリーンズの観客数はここから大幅な増加に転じます。2006年はBクラスに沈むも、2007年にもCSに進出。翌2008年にはついに観客動員数160万人と言う球団新記録を達成。西武はもちろんヤクルトや横浜をも上回りました。「やったぜ!ロッテはもう人気球団だ!不人気弱小球団じゃないんだ」と喜んだファンも多かったと思います。

そんなわけで、2005年から2008年までがロッテ球団の絶頂期となっています。
このころのロッテによるファンサービスは先進的かつ意欲的と非常に評価が高く、スポーツビジネスにおける成功例としてマスコミにも取り上げられました。主導したのは当時の球団本部長、荒木茂雄氏です。全席自由のビアスタジアムなど球場内外で新しいイベントを次々と実施し、グッズや弁当も積極的に販売、ファンクラブも大幅に改革し、ANAマイレージと連動するポイントサービスも開始しました。こうした動きはバレンタイン監督自身の明るいイメージと相まって千葉ロッテマリーンズのイメージを明るく楽しいものへと大きく変え、また知名度も大幅に向上したのです。
あのマイナーだったロッテがついにメジャーに!
昔はロッテファンだと言うと「なんで?」とまるで奇人変人を見るように言われたものです。それが2005年の優勝とその後のイメージ改善により、ロッテファンだと堂々と言えるようになったのです。
千葉のどこを探してもいなかったロッテの帽子をかぶった少年を街中で見かけるようになりました。マリーンズのステッカーを貼った車も見られるようになり、電車の中にはマリーンズの広告が貼られ、千葉ロッテマリーンズの露出度は確実に上がりました。このころのマリーンズは人気球団への道を歩きかけていたのです。

この流れがぶち壊しになったのは2009年にバレンタイン監督とMVPが引き起こした大騒動。MVPがライトスタンドで毎試合フロント批判の横断幕を出し、ボビーボビーと連呼する異様な雰囲気でシーズンが進みます。ゴタゴタの影響かチーム成績も低迷。シーズン終盤にはさらにエスカレートして「フロント死刑」という横断幕が出るにいたりました。見かねた西岡が「死刑ゲーフラは出さないでくれ」とヒーローインタビューで訴えたところ、MVPが西岡を中傷する横断幕を出すにいたり、ついに応援団に一般ファンから帰れコールをされる事態となりました。

この騒動が観客動員数に与えた影響は甚大で、異様な雰囲気に嫌気が差したファンの足が遠のいて2009年は8.5%減。翌年は西村政権の元3位からの日本一という効果もあり5.5%増と若干盛り返したものの、翌年以降ははチームが弱すぎて暗いムードが球場を支配。見ていて面白くないばかりか腹の立つ負け試合が多く、このこともファンが遠のく原因の一つになりました。
おまけに2011年は東日本大震災が追い討ちをかけました。2011年は前年比13.8%もの大幅減。2012年もチーム成績不振に歩調を合わせるように7%減。160万を超えていた観客は、120万人台まで減少してしまいました。2013年は伊東監督に代わり、前半の快進撃とCS進出により1.7%増となりましたが、2014年はチーム成績低迷もあって2.9%減。パリーグで最も観客動員数が少ない球団となってしまいました。

実は、崩壊のきざしは2006年ごろからあったと思います。
当時の球団によるファンサービスに対しての意見は過去のエントリーに書きました。2006〜2008年ごろのエントリーです。

セミナーで荒木部長の話を聞いてきた その1
セミナーで荒木部長の話を聞いてきた その2
マリーンズのファンサービスはどこに行くのか
CRM導入から2年、マリーンズのファンサービスは・・・
瀬戸山社長ラジオで語る
荒木部長経営戦略を語る
マリーンズ公式オンラインショップで個人情報の流出があった件
6/13に思うこと


ファン側の視点からすると、マリーンズのファンサービスはどこかおかしかったです。
CRMという顧客管理サービスを導入し、様々な顧客層に適したサービスを展開してロイヤルカスタマーの育成を目指すはずだったのですが、実際は新規ファンの獲得に重点を置き、既存ファンに対するケア、特に2004年以前からのファンに対するアプローチは後回しにされました。それどころかファンの支持が高かった小坂のトレード、清水直のトレード、久保のトレード、サブローのトレードなど、ファンの心理を逆撫でするトレードが多く、昔からのファンの多くが離れる結果となりました。

ただし、実際2007年当時のファンの半数は2005年以降の新規ファンだという話でした。なので彼ら新規のファンのつなぎとめが最重要課題だったはずです。
実際のところはどうでしょうか。内野席で観戦するファンと、外野席で観戦するファンでは求めるものが違うはず。それぞれの層に効果的なファンサービスを行うためのCRMだったはずですが、そのCRMがうまく機能していたかどうかは疑問があります。イベントやファンクラブ種別によるチケット割引率の変化など、ファンのロイヤリティーを高める施策は確かにありましたが・・・。

そして外野席のファンに対してです。外野席はチケット価格が安いですし、グッズもあまり買わず、球団に落とす金は多くありません。すでに外野席は土日ともなれば満員となり、平日の試合でもかなり入っていますから、外野に限ればこれ以上の観客増も難しいです。その一方で千葉ロッテマリーンズ=熱烈な応援というイメージが定着し、球団のイメージを語る上では欠かせない存在です。
つまり、外野のファンは応援のクオリティが維持されればよく、新規ファンを開拓するファンサービスを実施しても費用対効果が悪いと言うことになります。
ならばどうするか。荒木部長は「外野のファンに対してはMVPという応援団体を優遇すれば足りる」と思っていたのではないかと思います。2007年ごろはMVPの主要メンバーに準応援団登録をさせてビッグフラッグやコレオグラフィの準備をさせ、しかもその実施にあたっての事前告知を球団公式ホームページで告知するなど、球団と明らかに癒着していました。

MVPという応援団体は90年代後半から2000年代前半にかけて、現在のマリーンズの応援を作り出し、球場を盛り上げた功労者です。彼らが90年代後半から始めたビジター球場への応援ツアーもコアなファンを育てるという大きな役割を果たしました。
しかし、2005年ごろから選民意識を隠さなくなり、「自分たちは他のファンとは違う存在なんだ」と主張するようになりました。2007年ごろの球団による優遇策も彼らの選民意識をより高めたことでしょう。彼らが進める360度応援スタジアムという構想も、決して外野席のような応援をやりたくない内野のファン層からしたら受けが悪く、ファン同士の対立に発展しかねない火種となっていました。
その火種は2009年にはついにバレンタインの残留を巡る争いで暴発し、結果としてバレンタイン監督とMVPは表舞台から去る形となりました。暴発のきっかけが球団による優遇だとしたら、実に皮肉な話です。



ここまで振り返ったところで、観客数が減った原因を考えてみましょう。繰り返し書いている事柄もありますが、あえてもう一度書きます。


■ バレンタイン監督を支持していたファンが離れた。

2009年の騒動の結果として、バレンタイン監督のファンやMVPのメンバーの多くが球場を離れました。
彼らにとって、2010年以降のマリーンズはあまり魅力的なものに映らなかったようです。
また、バレンタイン監督の手腕で獲得したスポンサーもその多くが離れ、球団の経営に打撃を与えました。


■ ファンのライフステージの変化により、球場に頻繁に通うことが困難になった

1998年、18連敗の時にファンになった少年たちも、16年たった今は立派な大人です。
2005年のバレンタイン政権下でファンになった大勢の人たちも、10年経過すればそれぞれ状況が変わります。10代だったファンは20代となって就職し、20代だったファンは結婚、出産、育児、昇進、転勤、転職といったライフステージの変化を迎えます。これにより、今までよりも球場に行くことが困難になってしまったファンが多くなってしまったのではないでしょうか。かつて外野に通っていた若いファンが年を取って内野に移った反面、外野の世代交代が上手くいかず外野の動員数が減っているのではないかと思います。


■ 弱い

応援するからには勝ち試合を見たいです。強ければ客は入り、弱ければ客は入りません。
特にここ数年は客がたくさん入る土日の試合に限ってひどい負け方をするものですから、客が減るのも当たり前ですね。
せっかく初めて来た人があんなボロ負け試合をみせられたら、またマリンに来たいとは思ってもらえないでしょう。


■ 魅力ある選手が少ない

そうなんですよ。塀内久雄が引退してしまいましたし!
鈴木大地にしろ角中にしろ応援している側からすれば魅力的な選手ですが、いかんせん知名度が無く地味。
ピッチャーも良い選手が多いですけど、石川にしろ益田にしろ西野にせよ地味。
全般的にこれと言った特徴が無く、無難にまとまった小粒な選手が多いように思います。
岡田と角中ぐらいですかね。特徴ある選手は。今江があんなに地味な選手になってしまうとは想定外です。てっきりスターになると思ってました。
あと大松ね。大松。どうも呪いにひっかかったらしいですよ。
まとまった選手、名選手である必要は無いんです。球場で周囲と語りたくなるような選手を増やして欲しい。
一芸に秀でた選手を集めていくのも方法の一つかと思います。アジャやクルーズ、デスパイネはイイ線行っていますね。初芝様のような不思議な魅力に溢れた選手にまた出てきてほしいです。


■ 球場へのアクセスが悪い

個人的には大きな理由ではないと思います。客が少ない理由にはなっても、客が「減った」理由にはなりにくいのではないかと。
確かに東京駅から海浜幕張まで快速で40分かかりますが、西武ドームよりは都心から近いです。
船橋や松戸といった千葉県内の主要都市から行きにくい?
確かにそうですが、以前よりは格段に良くなっていますよ。武蔵野線の海浜幕張直通が増えましたし、京葉線の快速が南船橋に止まるようになったので、京葉線と武蔵野線の接続が良くなりました。また幕張本郷駅からの直通バスがここ数年で大幅に増便され、総武線の沿線から行きやすくなりました。駐車場はイオンやらメッセの駐車場が整備され、かなりの台数を収容することが出来ます。
むしろ鉄道のアクセスよりも、駅から球場まで微妙に遠いことがマイナス要因になっているのかもしれません。こればかりはどうにもなりませんが。
あと課題があるとすれば武蔵野線の海浜幕張直通のさらなる増発と、土日の夜の京成千葉線の本数の少なさをどうにかしてもらえればと思います。また試合終了後は交差点への出口が渋滞してバスがなかなか出られませんので、バス専用の出口を作ってスムーズに道路に出られるようにすればかなり所要時間が短縮されてアクセスが向上するのではないかと思います。個人的には試合終了後に津田沼行きのバスを走らせて欲しいのです。


■ 最近のファンサービスの低下とマンネリ化

先進的なファンサービスも変化しなければマンネリになります。選手ごとのピンバッチやファンクラブ会員へのユニフォーム無料配布はロッテが元祖で、特にユニフォーム配布はファンの獲得に大きな役割を果たしました。しかし今ではどの球団もあたりまえに行うようになり、ロッテとしての独自性はなくなっています。

また、お金が無いのかファンサービス自体もかなり削減されました。
荒木氏はかつてマリンスタジアムをディズニーランドに負けないボールパークにすると息巻いていましたが、今はとてもボールパークとは呼べませんね。

実は2005年当時からファンサービスの実働部隊が貧弱だったため、ファンサービスの中にはかなり雑なものもありました。
ファン向けに販売するユニフォームのワッペンの向きが違っていたり、個人情報の流出をやらかしたり、チームのマスコットの中の人の募集をあろうことか球団公式ページで行ったり、色々とひどいです。2009年にはチームのファンクラブ会員証のLOTTEの文字がLOTEになっていました。チーム名を、しかも親会社の名前を間違えるなんて普通の企業ならありえません。2009年はバレンタイン監督と球団との確執が原因で、バレンタイン寄りとされたファンサービス担当職員が何人も辞めたと言う話ですから、最近のファンサービスの質の低下はやむを得ないかとおもいます。今もまだその後遺症は癒えていません。

球場のイベントも代わり映えしません。魅力と言う点では完全に西武に負けています。チアガールに躍らせるだけのイベントや、ファンから募集した川柳の発表など、色々やってはいるのですがマンネリ化している印象があります。ファン参加型のイベントは減りましたね。バレンタイン政権のころより球場でのワクワク感が減った、と感じるファンが多いようです。
ファンクラブの景品や新グッズも一瞬にして無くなるなど、需要の読みも甘くなっているように思えます。

球場の設備自体は徐々にではありますが改善しています。トイレの改装がようやく終わり、売店の種類も増え、球場外に露店が並ぶようになりました。座席も良いものに交換され、ユニークな新シートも毎年のようにお目見えしています。これは良い事です。
しかし、フィールドウィングシートにネットがついたのはいただけませんね。臨場感が売りの席なのに、ネットを着けたら魅力半減で、4800円と言う高額なチケット代に見合っていません。1塁側なら勝利後に選手とハイタッチできますからまだいいものの、3塁側はインセンティブがまるでなし。半額で見られるA指定やマリンシートの方がネットが邪魔にならず、快適に観戦できます。ネットの有無は写真撮影をするファンにとって死活問題。トラブル防止の問題があるにせよ、裁判にびびらず、ネットを取り外して欲しいです。
また、試合開始前に日陰で休める場所が少ないという指摘もありました。たしかに2階席と外野以外は屋根がありませんし、球場内コンコースにはベンチがほとんど無く、球場外も屋根つきの休憩スペースがありません。子供連れや高齢者にとっては大きな問題かと思います。


■ 地域に密着しきれていない

以前に比べればかなり頑張っているとは思います。新京成電鉄にマリーンズのラッピング電車を走らせたり、柏で選手のトークショーを開催したり2軍の試合を実施するなど、今までアピールが弱かった東葛地区へも積極的にアプローチするようになりました。トークショーなどのイベントも千葉市周辺だけでなく、木更津や茂原や成田など県内各地で行うようになっています。
2軍のキャンプを鴨川で実施したり、2軍の試合を袖ヶ浦、成田など県内各地で行う点も集客に寄与するでしょう。来年は船橋市でも2軍戦を開催するとのことで、日ハムの2軍に攫われがちな千葉の野球好きをなんとかして取り込みたいところです。できれば2軍の本拠地も千葉県内に移転したい所ですが、成田への移転話が立ち消えとなった今となっては難しいでしょうか。自社工場の敷地というおいしい立地ではありますが、練習場を潰してマンションを建てた方が儲かると思うんですよね。

また、数年前から「千葉こころつなげよう」というテーマソングを作成するなどして、千葉への密着をアピールしていますし、船橋の英雄ふなっしーを球場に2回も呼びました。球場外でも千葉県内各地の名物料理を出すなど様々な取り組みを行っています。

しかし、努力が実りロッテが千葉の県民球団になったかというと、残念ながら答えはNO。以前よりも知名度は上がったとはいえ、長嶋を生んだ千葉県はやはり巨人ファンが多いです。
東京に近すぎるのもマイナスに働いていますね。千葉日報は新聞としてはマイナーですし、チバテレというローカル局は在京キー局に比べるとどうしても発信力が弱いです。したがって地方の球団と異なりメディアによる後押しがほとんど期待できません。東京に近いため娯楽の選択肢が地方に比べて多いことも地方に比べ不利です。県民性の問題もありますね。千葉都民という言葉が示すように、東京近郊ということで県民意識が希薄。歴史的にも下総、上総、安房と別れ、天領や旗本領など細分化されていたので地域としてのまとまりを欠きます。

決して野球人気が無いわけではないのです。マリンで行われる甲子園の県予選決勝は満員になります。高校野球を見に来る人たちが、なぜロッテの試合を見に来ないのか。このあたりはよく検討する必要がありそうです。

■ 応援のマンネリ化

今の応援スタイルになって20年。他の球団もロッテの応援を取り入れ、新鮮味が薄れました。
また2009年の騒動により2010年から応援歌が変更され、歌詞の多い応援歌が増えました。サブローやG.G.佐藤のように歌いやすく覚えやすいものもありますが、はっきり言って覚えにくいものが多いです。新規ファンにはとっつきにくい応援歌は改善の余地があると思いますが、ラッパの無い仙台での使用を考慮して歌詞が多い局を増やしたという話も聞いたことがあります。難しい・・・。
いずれにせよ、応援は客が減った理由としては弱いと思いますが、応援目当てのファンを増やすのは今後難しくなるかもしれません。


■ 初めて来場した客への案内が悪い

水道橋のチケットショップの二見社長がブログやツイッターで分析しています。
入場券売り場や入場ゲートの位置がわかりにくく、案内も弱い。帰りのバスの乗り場が分かりにくい。ファンクラブの入会ブースがどこにあるのかわかりにくい、まだ4月なのにファンクラブ特典のグッズが品切れ、などなど・・・。
実は以前よりも相当マシになっているのですが、まだ足りないということでしょうか。「新規ファンを取り込もうとしていない」という指摘は耳が痛いです。我々コアなリピーターが見逃しがちなことをしっかりと書いており、とても参考になりました。

QVCマリンの観客動員数が減ったのはチームの成績以外に原因あり?千葉ロッテマリーンズの問題点

上記の記事を受けて記載した私の記事。沢山のコメントが寄せられました。ファンの多くがマリンの現状に疑問を抱いているということでしょう。

チケットショップT1の社長がQVCマリンの現状を斬る


■ 金が無い

結局の所これなんです。正確には親会社が球団に金を出そうとしない。だからファンサービスは貧弱になるし、たまに配られるユニフォームの質はひどいものだし、ただ働きさせられているインターンの学生に対するファンの反応はイマイチ。金が無い中がんばっているのは確かなのですが、残念ながら結果に繋がっていません。


こうしてみると、バレンタイン政権下でファンになった人たちのつなぎとめに失敗したばかりか、2009年以降新規ファンの獲得に積極的にならなかった結果が今の状況を生んだと言えるでしょう。球場内が常連にやさしく一見さんに厳しいというのは上に述べましたが、ならば球団が常連客に対し何らかのサービスを行っているかとも言い難い。非常に難しい状況です。
収益改善を図るならまず内野に客を入れなければならず、ターゲットとしては家族連れか中高年になるでしょう。
そのためにはバリアフリー化が不可欠。内野の入場口に階段でしか行けないのでは高齢者にやさしいとは言えません。2階内野自由席に行くならさらに階段を登らなければならず、高齢者でなくとも苦行です。エスカレーターやエレベーターを増設すべきなのですが、トイレの改修すらファンからの募金を集め、しかも何年もかかっている状況ではバリアフリー化など夢物語にすぎません。


暗澹とした気分になります。
このままではまずいというのはファンも球団も分かっていること。
できることからコツコツやるしかありません。好きの反対は嫌いではなく無関心。人々がロッテに対し無関心になる前に、打てる手は打ちましょう。