3月10日と11日に東京ドームで侍ジャパン対ヨーロッパ代表の親善試合が行われました。
残念ながら事前の注目はそれほど高くありませんでしたが、ヨーロッパの選手たちによるこの試合への意気込みは相当なものでした。
侍ジャパン公式サイトからイタリアの選手たちの発言を紹介しましょう。


青のプライド〜挑戦者たちの素顔〜

「これは僕にとって物凄く大きな意味がある試合だ。世界最高の選手たちと戦えるんだからね。僕らの大半は野球の他に仕事を持たないといけないから、野球を生業とする彼らと戦えるのはまたとないチャンスだと思う。今、世界の中での自分たちの立ち位置を知る意味でも意義は大きいよ」(アレッサンドロ・バリオ)


「代表に選んでもらえて本当に嬉しかった。日本のような強豪国と戦う機会を望んでいたんだ。このゲームを通じて、イタリアや欧州がコンペティティブな野球をする国・地域であることを証明したいね」(ホセ・エスカローナ)


「何年もの間日本でプレーしたいと思い続けてきたし、このオフの間もそのためにトレーニングを積んできた。早く日本に行きたい。君たちのチームと戦えるのが楽しみだよ」(ファンカルロス・インファンテ)


「ヨーロッパの人々に対して野球をアピールする絶好の機会だ。世界屈指の野球大国である日本と欧州代表として戦えるのは、その意味で本当に貴重なことだと思う」(マエストリ)


「メディアにこの試合を取り上げてもらいたいね。ヨーロッパ野球にはもっとメディア露出が必要だし、このシリーズは注目度を高める絶好機だろう」(マリオ・キアリーニ)


「サッカーしか知らない人々に新しい価値を提供できればと思うよ。『これが野球なんだ』ってね」(アレッサンドロ・バリオ)


「今回の試合は本当に楽しみにしている。2日間ともワールドシリーズ第7戦のようなテンションで戦うよ。それが僕らの文化だし、こういう機会がまたいつか訪れる保証だってないからね。確かに僕らは有名ではないかもしれないが、それでもいい野球ができるところを見せたいんだ。きっと素晴らしいシリーズになるよ」(ステファノ・デシモーニ)




私が3月10日の試合。チケットが売れずガラガラと聞いていましたが、平日の日ハムロッテ戦よりも明らかに客が入っていました。実際の所2万3000人程度入ったそうで、平日ならボチボチじゃないでしょうか。

試合はヨーロッパ代表が先制。
2回表に大瀬良からオランダのサムスとデカスターがヒットを放ち無死1,3塁。ここでスペインのアングロがゲッツーに倒れるもランナー一人生還しまず1点。

4回表にはオランダのスミスがヒット、スペインのマルティネスが死球で無死1,2塁。その後2アウトとなるもスペインのアングロが放ったセンター後方へのフライを雄平が落としランナー2人が生還します。どう見てもエラーですが記録はタイムリーヒット。ヨーロッパ代表が3点のリードを奪います。

投げては1回と2回をオランダのレジェンドことコルデマンスが抑え、3回からオリックスに在籍するイタリア人ピッチャーマエストリが登板します。

日本代表は4回裏に山田のタイムリーで1点を返すも、マエストリに抑えられそれ以上の追加点を奪えません。
ヨーロッパ代表も藤浪のストレートは打てても変化球は打てず無得点が続きます。
6回裏と7回裏はヨーロッパの3番手イタリアのエスカローナ。ダイナミックなフォームで2回を無失点に抑えます。

試合が動いたのは8回裏。
ヨーロッパのピッチャーはオランダのマルティス。投球フォームだけ見ると立ち投げ草野球おじさんといった感じですが、実際はメジャー経験もあり、去年は台湾の統一で8勝もしているのです。しかし結果は2四球で降板。後を受けた元楽天のオランダ代表ファンミルも制球定まらず連打を浴びます。
結局この回筒香、マツダ、雄平の連続タイムリーで4点。逆転に成功します。
9回表はマリーンズの西野がクローザーとして登場。1点差なので心配です。
西野は先頭のデカスターに大きなフライを打たれますが、その後2車連続空振り三振で試合終了。なんとか侍ジャパンがヨーロッパ代表に逆転勝ちしました。



ヨーロッパ代表侮りがたし、というのが正直な感想ですね。ただの速球なら難なく弾き返しますし、守備もしっかりしていました。特にサードやショートの肩の強さや動きのよさは日本人に無いものですね。アメリカのマイナークラスと言って良いでしょう。
事実ヨーロッパ各国のリーグに所属するトップクラスの選手たちは皆アメリカでのメジャーやマイナー経験があります。ドミニカやベネズエラなど中南米出身であっても祖父母などのルーツがヨーロッパであればその国の国籍が取れてしまうので、ヨーロッパ国籍とはいってもヒスパニック系の選手が多いようでした。特にオランダにはバレンティンを産んだオランダ領アンティルというカリブ海の島を持っていますから、オランダのプロ野球でもアンティル諸島出身の選手が多く活躍しています。
こうしたヒスパニック系の選手たちの影響でヨーロッパ本土出身の選手たちの技術も飛躍的に向上しており、ヨーロッパ出身のマイナーリーガーやメジャーリーガーも続々と誕生しています。


続いて3月11日。
この日は侍ジャパンの先発松葉が炎上。
2回裏にイタリアのキアリーニがタイムリーツーベースを放ってヨーロッパ代表が先制すると、スペインのオチョアもタイムリーツーベースを放ち0−2とします。

さらに3回裏にはオランダのデカスターがスリーランホームランを放ち0−5。
デカスターはWBC2回出場したオランダ代表の主軸。2006年にはパイレーツでメジャーデビューしたほどの実力者です。やはりオランダは強いですね。

その後侍ジャパンは6回表に山田のソロと銀次の内野ゴロで2点を返し、2−5とします。
一方ヨーロッパ代表は2番手の井納や3番手の武田に抑えられていましたが、8回裏に楽天の松井からイタリアのバリオがツーベース、オランダのサムスが犠牲フライを放ち1点追加。2−6としました。

逆転したい侍ジャパンですが、今日はヨーロッパ代表のピッチャーが良かった。
3番手のドイツ人左腕ゾマーが日本に傾きかけた流れを押しとどめ、最終回はオランダのストゥイフベルゲンが気迫のピッチングで侍ジャパンを抑え込みました。クローザーとして充分通用しますね。ロサがダメだったらマリーンズで獲得すべきでしょう。

試合はそのまま2−6で終了。ヨーロッパ代表が日本の1軍クラスの選手を並べた侍ジャパンに歴史的勝利を飾り、野球の歴史に新たな1ページを刻みました。




このヨーロッパ代表による歴史的勝利の影にはヤクルトのバレンティンによる尽力がありました。
日本で唯一のジャーナリズム紙として知られる東スポが詳しく記事にしています。


【侍ジャパン】欧州代表戦の舞台裏であの男が大暴れ (東スポ)

 下馬評の低かった欧州代表だが、第1戦に続き11日も侍ジャパンを苦しめた。そんな欧州代表を陰で操ったのが、前回WBCにオランダ代表で出場した、ヤクルトのウラディミール・バレンティン外野手(30)だ。

 出場こそかなわなかったが、10日の第1戦は試合前に激励した後、スタンド観戦。加えて大会直前の8日にも大量の野球道具を持って欧州代表の宿舎を訪れたという。それはどれもヤクルトのチームメートが使用した“プロ仕様”の一級品で、欧州代表のテンションは大幅アップしたそうだ。

 しかもその中にあった館山のグラブを渡す際には「ヒー・イズ・スリータイムズ・トミージョン。アンビリバボー。(彼は3回も肘腱移植手術を受けている。信じられるか?)」との“欧州ジョーク”をかましムードアップにも貢献していた。

 さらに「欧州の選手たちに『試合で活躍したらヤクルトに紹介してやる』と話したらしい」(球界関係者)と、ニンジン作戦まで行っていたのだから恐れ入ったもの。もともと実力差があった上に欧州代表の“やる気”も不安視された今大会だが、故郷の代表を思うバレンティンがあの手この手でケツを叩いていてこの展開となったわけだ。

 ただ「あいつは『問題ない』と言っていたが、本当にヤクルトの選手に許可を取っていたのか不明。勝手に取ってきたっぽい」(侍関係者)との指摘もある。大会を盛り上げたバレンティンが、後でチームメートに怒られないことを祈るばかりだ。


バレンティンがヨーロッパの選手たちにヤクルト入りをちらつかせていたとは。確かに日本でアピールをしたいという選手も多いですし、選手たちの気迫は侍ジャパンに勝っていたと思います。



そしてこの大勝利。ヨーロッパではどのように伝えられたでしょうか。

各国プロ野球の公式サイトでは「歴史的勝利」と詳しく報じています。


■オランダ

Historische zege Europa in Global Baseball Match
日本語訳


De Caster slaat Europa naar winst
日本語訳

Janssen: “Goed gevoel om met een overwinning te vertrekken”
日本語訳



■イタリア

All Euro, impresa storica da non lasciare isolata
日本語訳

Per gli All Euro arriva una vittoria storica
日本語訳



■ドイツ

Team Europa mit historischem Sieg gegen Japan / Luke Sommer mittendrin
日本語訳



■フランス

L'Europe ecrit l'histoire
日本語訳



■スペイン

Rally en octava entrada pone a Japon por encima de Europa 4-3 en debut historico del nuevo equipo
日本語訳

※現在10日の試合の記事しかありません。



■チェコ

Serie Japonsko vs. Evropa skončila nerozhodně
日本語訳



しかし、野球関係ではなくヨーロッパにおける一般のスポーツマスコミからの注目は残念ながら高くないようです。
衛星中継を行ったユーロスポーツのホームページのニュースコーナーを見ましたが、野球と言うカテゴリ自体がありませんでした。ヨーロッパでの野球の知名度はまだまだその程度です。

ニュースを確認できたのはオランダ。


Europese honkballers winnen dankzij Nederlanders nu wel van Japan (NUsport)
日本語訳

オランダの選手が活躍したこともあり、写真付の記事でこの試合を取り上げています。


意外なのがチェコ。
ちゃんと東京ドームまで取材に行き、動画のニュースにもしていました。
チェコの人たちには野球好きが多いのかもしれません。

Serie Japonsko vs. Evropa skončila nerozhodně (Česka televize)
(動画視聴不可)

Baseballovy vyběr Evropy nestačil na Japonsko
(動画視聴可)

Baseballiste Japonska si poradili s vyběrem Evropy
(動画視聴可)



日本にとっては残念な結果でしたが、野球のグローバル化という意味では非常に大きな意味のある試合だったと言えるでしょう。
今日の試合をきっかけにヨーロッパでも野球への関心が今後高まっていくことを期待したいです。



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