昨年末にダルビッシュが「ロッテファンは佐々木朗希をメジャーに行かせてやれという署名活動をしてほしい」と、自ら運営するインターネットラジオで発言し、物議を醸しています。

ダルビッシュ ロッテファンに異例呼び掛け「佐々木朗希くんをメジャーに行かせるよう署名活動して!」(東スポ)2023年12月29日
パドレスのダルビッシュ有投手(37)がロッテ・佐々木朗希投手(22)をメジャーに行かせる署名活動をしてほしいと訴えた。

 音声配信サービス「stand fm」に28日に登場したダルビッシュは、大谷翔平と山本由伸が同じナ・リーグのドジャース入りしたことに「すごく悲しい。なんて言うんだろう、この気持ち…。ドジャースにいたから良さは分かる。でも、僕がパドレスに行ってドジャースを倒したい、といつも燃えている。日本人で契約できるなら集まって倒したいというのはあった」と複雑な心中を吐露。日本人軍団の結成を夢見ていたようで「ふっと力が抜けた」という。
 
 さらに近い将来のMLB移籍を視野に入れる佐々木朗の今後にも触れ「応援してあげてほしい。ロッテファンはメジャーに行かせてほしいと署名活動してほしい。まだ早いとか、球団にもっと恩返ししてから、とか言うけど、そこを逆にね。みんなで署名活動しましょうよ。このラジオから選手をアメリカに送りましょう!」と呼び掛けた。

 佐々木朗は今オフにポスティングシステムを利用してのMLB移籍を球団に要望していたことが明らかになっている。契約更改も越年。球団との交渉が続く中「佐々木君の心が心配。入った時にメジャーどうこうの話になっていたのかどうか…」と心中を察し「パドレスならOK。松井(裕樹)くんも僕もあと5年いる。佐々木くん、上沢(直之)くん、今永(昇太)くんも来てほしい」とエールを送っていた。


ただ、ダルビッシュ本人によると、この発言は本気の発言ではなく、冗談のようなものらしいです。

ダルビッシュ選手は以下の通り発言しています。




しかし、放送を聞く限りとても冗談とは思えないニュアンスでした。



だいたい23分35秒あたりから、下記のように発言しています。
ロッテファンの気持ちはわかるけど、ロッテに「佐々木君を行かせろと、メジャーに行かせてやれ」という署名活動をしてほしい。逆に」
「みんなで署名活動しましょうよ。このラジオから選手をアメリカに送りましょう」


非常に残念な発言です。
言って良い冗談と悪い冗談があるのではないでしょうか。
パワハラの加害者は皆言いますよね。
「本気じゃなかった」、「冗談のつもりだった」と。
パワハラ発言をしたかどうかが問題なのであって、本気かどうかは問題ではありません。
受け取る側がパワハラと感じればそれはパワハラですし、本気の発言でなかったとしてもパワハラの罪が軽くなるわけではありません。
冗談なら何を言っても許されるわけではないのです。

ロッテファンに対して安易に署名活動を呼びかけたことも残念です。
なぜなら、ロッテファンにとって署名活動とは過去のトラウマを抉るキーワードだからです。

今世紀になってロッテファンが署名活動を行ったのは2回。
2004年に行われた近鉄とオリックス、ロッテとダイエーによる球団合併に反対する署名。
2009年に行われたボビー・バレンタイン監督の残留を求める署名です。

広がる合併反対署名運動 オリックス、ロッテ選手会も(朝日新聞)2004年7月31日
オリックス・近鉄の合併と急速な1リーグ制への動きに反対する署名運動が31日も広がった。

 オリックス選手会はこの日、署名活動を初めて行った。本拠ヤフーBBスタジアムでの練習後、谷、村松ら選手26人がユニホーム姿で球場前に並んで呼びかけた。約20分の間に257人分の署名が集まった。川越選手会副会長は「一人一人の生の声を大事にしたい。12球団が一つになり、なんとか違う方向に持っていけたらと思う」。

 岩隈、川尻ら近鉄の6選手は、ゲストとして招かれた大阪府堺市の「堺大魚夜市」で、署名活動などを通じて合併反対を訴えた。球場以外での選手の署名活動は初めて。選手が参加した2時間だけで約1800人の署名が集まった。川尻は「合併問題は今、社会的な問題。野球界とは(直接)関係のない所でも呼びかけたい」と話した。

 ロッテ選手会は、西武戦前の練習後約1時間半にわたり、外国人を除くほぼ全選手が参加して、署名を集めた。1860人から賛同を得た。選手会副会長の小林雅は「みなさんの純粋な気持ちがひしひしと伝わってきた。ファンと選手の思いは一つだということがはっきりしました」と力強く話していた。


2004年については千葉ロッテマリーンズが消滅して福岡に移転する寸前まで行きました。
近鉄とオリックスが合併すると11球団となるため、もう1組合併させて10球団とする計画が進行していたのです。
経営破綻したダイエーを救済する形でロッテがダイエーホークスを合併し、福岡ロッテホークスとして福岡に移転。
ファンは当然反対し、署名活動まで行いましたが、ファンの声が球団に届くことはありませんでした。
ただ、ダイエーが国の支援を受けて経営再建を始めるには、ホークス球団を手放すことが条件でした。
ダイエー側は自主再建にこだわり、合併により経営権を残そうとしました。
このためダイエーを巡る再建計画がなかなかまとまらず、交渉のタイムリミットが過ぎてしまったのです。
結果として近鉄が消滅してオリックスと合併して11球団となりましたが、ロッテとダイエーは合併せず、代わりに楽天が新規参入して12球団が維持されることとなりました。
もしダイエー経営陣が国の支援をあっさり受け入れてダイエーホークスの経営権を手放していたら、ロッテが吸収合併して福岡に球団を移転させたでしょう。
ホークスと福岡ドームの契約はドームの持ち主であるアメリカのヘッジファンドとの契約で一体運営しなければなりませんでしたから。

2009年のバレンタイン監督の残留署名はファンを二分する大騒ぎとなりました。
署名の当事者となった応援団体は10万人分の署名を集めたとしていますが、バレンタイン監督の高額な年俸や2年連続Bクラス濃厚という実績を根拠として残留に反対するファンも多かったのです。
バレンタイン擁護派の応援団体が球団や球団幹部を過激に批判するゲーフラをライトスタンドで掲げました。
これに対し西岡剛選手が「子供たちの夢を壊さないでほしい、球団幹部を個人批判するようなゲーフラは下げてほしい」という趣旨の発言をヒーローインタビューで行いました。
するとバレンタイン擁護派の応援団体及び応援団は西岡への応援を拒否し、西岡批判ゲーフラを掲げました。
野球ファンとしての一線を越えた振る舞いに対し、一般ファンの怒りが爆発。
ついに観客から応援団に対して「帰れコール」が沸き上がる事態となりました。
忘れもしない、2009年9月27日のオリックス戦でしたね。
12球団一の熱い応援が崩壊した、ロッテの応援が死んだ日でした。

ロッテファンにとって署名活動というワードがいかにトラウマを抉るのかお判りいただけたと思います。
署名なんて無駄なんですよ。お金がなければ何もできない。
近鉄にお金があれば合併などしませんでしたし、ロッテ球団にお金があればバレンタインを切ろうという話にはならなかったと思います。

佐々木朗希の移籍問題も結局お金の問題が大きいです。
メジャーリーグで導入された25歳ルールにより、ポスティング移籍に伴うロッテ球団への譲渡金が、25歳以上で移籍した場合と25歳未満で移籍した場合で大幅に異なるからです。

25歳ルールとは「MLBの球団が25歳未満もしくはプロ6年未満の海外選手を獲得する場合、使える金額の総額は契約金や年俸を含めて500万ドル(約7億円)程度に制限され、なおかつマイナー契約しか結ぶことができない」というものです。
日本の球団が手にする譲渡金は25歳未満の場合契約金の25%となっています。

2017年に大谷翔平がエンゼルスに移籍した時は25歳ルールが適用され、移籍金は231万5000ドル(約2憶6千万円)という破格の安さでした。
これは当時エンゼルスが25歳未満の海外選手に支払い可能な上限額だったと言われています。
ただし、2017年は25歳ルール導入当初の移行期間ということで、譲渡金は25歳ルールの適用を受けず、25歳以上の選手も含めた上限額である2000万ドル(約22億円)もの大金が日本ハム球団に支払われました。

佐々木朗希の場合は25歳未満であればロッテ球団への譲渡金は契約金の25%ですから2億円で移籍すれば譲渡金は5000万円にしかなりません。

25歳以上でポスティング移籍すれば譲渡金数十億円が球団に入るのに、25歳未満で移籍するとわずか5000万円程度。
ポスティング移籍はあくまでも球団が認めることで成立しますから、これだけ譲渡金に差があれば絶対に認めないでしょう。

ロッテファンとしても25歳未満でのポスティング移籍を求めるメリットがまるでありません。
チームは戦力ダウンしますし、球団に入る譲渡金は25歳以上で移籍した場合の数パーセントになりますし、損ばかりです。
佐々木朗希個人のファンならともかく、ロッテのファンであれば署名するファンはほとんどいないのではないのでしょうか。
正直ダルビッシュが何を根拠にロッテファンが署名活動をすると思ったのかわかりません。
冗談にしろ本気の発言ではないにしろ、ロッテファンを馬鹿にした話ではないでしょうか。

球団としてのスタンスは以下の通り。
社長は「活躍すれば後押ししたい」と言っていますね。
シーズン通じて1軍に在籍したことがなく、規定投球回にも達せずタイトルも録っていない選手が活躍したとはとても言えないです。

【ロッテ】高坂社長、選手のメジャー挑戦について「活躍した選手の挑戦は後押ししていきたい」(ニッカン)
ロッテ高坂俊介球団社長(41)が、ポスティングシステムによるメジャー移籍について言及した。4日、球団職員に向けて年始のあいさつを行い、ZOZOマリンで会見を行った。

佐々木朗希投手は将来的にメジャー挑戦の意向があり、高坂社長は米球界挑戦について「個々の選手の契約について、今日は私の立場ではコメントを差し控えたい」とした。その上で選手全般に対し「以前から話している通りですが、活躍した選手がメジャーに挑戦していくことについては、球団として後押ししていきたいという考え方について、昔から変わっていない」と、従来の球団の方針を改めて示した。

球団では10年オフに高卒8年目を終えた西岡剛のポスティングを容認している。その年、西岡は打率3割4分6厘で首位打者と最多安打のタイトルを獲得し、日本一に貢献。「野球をやっている以上、最高峰のレベルでプレーしたいと思った」とポスティングを申請した。ツインズが530万ドル(当時約4億2400万円)で入札し、3年総額925万ドル(同約7億4000万円)で契約。ただ計2年で71試合出場、打率2割1分5厘にとどまり、2年目のシーズン後に契約解除を申し出た。

佐々木は昨季WBCで世界一に貢献したが、7月に左脇腹肉離れで長期離脱。15試合にとどまり、7勝4敗、防御率1・78だった。吉井監督は「中6日でいってほしい」とシーズンを通した活躍を期待している。【星夏穂】


まあ、佐々木朗希のメジャー移籍は既定路線です。
譲渡金の金額が跳ね上がる25歳までは怪我することなくロッテにいていただいて、25歳になったらドジャースなりヤンキースなり好きに移籍していただきたいと思います。

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